#2 『LONELYPHANTOM』 01



#2
LONELY2PHANTOM

 成瀬家07:44 a.m.

ばあちゃん:「金太郎、そろそろ起きやー」

金太郎:「ええええぇ〜(笑)」

ばあちゃん:「じいさんなんか、もうジョギングしてマラソンしてきたんやで」

涼:ジョギングしてマラソンしたのか……スゴイな。

金太郎:「うーん……あと、あともう少しなんや……(ムニャムニャ)」

ばあちゃん:「早うしないと、学校遅れるで」

金太郎:「今日は休みやろー……」

ばあちゃん:「何を言いよるんかね、この子は……。今日はまだ、金曜日やで」

金太郎:「はあ? ……今日は月曜やろ?」

じいちゃん:「金太郎〜、早ようこんかい、『週末占いカウントダウン』始まったで〜」

金太郎:「……はあ?」

涼:今日……何日?

GM:10月6日、金曜日。

金太郎:………………。……ちょっと待て、ちょっと待て、わい。……落ち着け。落ち着いて……。──んで…………寝るか。

一同:寝るのかーッ!

 西暦2000年10月06日(Fri.)
 梨畑家07:52 a.m.

澪:「朝だぞ、いいかげん起きろー。……早くしてくれないと、あたし学校遅れちゃうんだけど」

涼:「ぅーん……」

浩之介:……誰?

チャーリー:保健医デショ。

GM:(バレてたか、さすがに)

浩之介:同棲してたのか、コイツ……。

GM:プレイヤーは知ってていいけど、PCは知らないことになってるから。

澪:「今日はハムエッグが食べたいぞー」

涼:(のろのろと起きて)「ハマグリが食べたい? ……今、焼いてやるよ」

澪:「早くしないと、学校遅れるよ」

涼:「体育の日が移ったんだよ。知らないのか?」

澪:「それは月曜日でしょ。今日は……金曜日」

涼:「月曜月曜」

澪:(新聞を見て確かめて)「金曜日だってば」

涼:「いつから」

澪:(ため息をついて)「……もう勝手にしなさい」(学校にいく支度をする)

涼:記憶は、あるんだろ?

GM:ん?

涼:時が巻き戻ったってこと、解ってていいんだろ?

GM:いいよ。……澪は、そういうことがあったって知らないみたいだけど。

涼:「で……金曜?」

 結城家07:58 a.m.

GM:『めざましテレビ』の天気予報とかで、今日が金曜日であることを知っていいよ。

隆志:……妄想過多かな。

涼:何でそうなる(笑)。

GM:んで、8時を回ってワイドショーが始まる。「昨夜、新宿区に住む21歳の女性が行方不明となりました。警察ではここ一連の連続誘拐事件との関係も考慮した上で──」

ヒフミ:「また誘拐事件なの?」

隆志:「うん」(生返事)

ヒフミ:「アナタも小鈴ちゃんのこと、ちゃんと見といてあげてね」

隆志:「うむ」(生返事)

浩之介:……本当に恋愛結婚だったのか?

隆志:え、教授の娘だから結婚したんだよ。

小鈴:「早起きしたのにもうこんな時間。……いってきまーす!」(パンをくわえて走る)

隆志:小鈴は、時間が巻き戻ったことを知っているの?

GM:プレイヤーが都合で帰ってしまったからね。知らないことにしよう(以後、小鈴はNPCとなる)

隆志:じゃ、私もいくか。

GM:お弁当、受け取っていってね。

 千歳高校校門前08:20 a.m.

GM:登校の時間だよ。

チャーリー:「ふう……やっぱりアレは、僕は女の子とうまくいきかけても、結局はダメだという夢だったのデスね……」

GM:まどろっこしいヤツだな。

チャーリー:ブルーな気分で登校しマース。

涼:投降するのか。……そりゃブルーだろうな。

GM:では、服装チェックよろしく。

浩之介:スカートの長さチェーック! そして今日も、ピアスに気づかない。

隆志:ルーズリーフに気づかないのだね。

GM:気づけよ、『2回目』なんだから。

涼:聞いて回ろう。「今日何曜日だっけ?」

同級生:「金曜だろ。ドラえもんの日」

涼:「なんかもっと他にあるだろ、ミュージックステーションとか、金曜ロードショーとか」

同級生:「いや、金曜といえば、ドラえもん」

涼:とにかく、金曜なんだな。……うーむ……。

 2年A組08:32 a.m.

チャーリー:あれ、今日は金ちゃんお休みデスか?

浩之介:進吾とかの反応はどうなの? 妹がどうとか言ってない?

GM:あれ、妹のこと知ってたっけ? ってかんじだ。一真や二葉たちも、時間が繰り返していることには気づいていない。ま、PCだけだと思ってくれれば。
 

 さてさて。どうやって自分と『同じ立場』にいるものに気づくのか。どうやって、この現象を打破するための協力者を見つけるのか。上手にPCを誘導していけるかどうかは、プレイヤーの腕にかかっているワケで。
 

GM:ホームルームの時間だよ。

ヒゲ先生:「また誘拐事件が起きたようだな。未成年の凶悪犯罪も後を断たないようだし」

信也:「オレもやっちゃおっかな〜」(どっ、とクラス中が笑う)

ヒゲ先生:「最近変な事件が多いから気をつけるように、悩める17歳の諸君」
 

 出ていくヒゲ先生。その直後、教室に飛び込んできたのは……金太郎である。
 

金太郎:(手をぱんぱんと叩きながら)「はーいみんな席につく〜。チャイムとっくに鳴ってるよ〜」

GM:んー……誰も相手にしてくれないねぇ(笑)。

金太郎:「先生今日は、みんなに聞きたいことがあります。……今日は何曜日ですか?」

GM:やっぱり、無視。

金太郎:「マジメに聞いとるんじゃ、ボケーッッ!」(マジギレ)

隆志:いつもとキャラクターがあまり変わらないから、誰も気にしてないのだね。

陸奥先生:(教科書で頭をはたいて)「……ボケはどっちだ。早く席につけ」

金太郎:「あ、こらどうも」

 2年A組09:05 a.m.

GM:1時間目は数学です。てことで抜き打ちテストだ〜!

金太郎:「みんな、答えはな、16、676、22、23やで〜!」

GM:「うそうそ」「俺たちを撹乱させる作戦だ」とか言われてるぞ。

金太郎:なら、さらさらっと答えを書いて、提出しよ。

陸奥先生:(答案用紙を見てから、金太郎を廊下に引きずっていく)

金太郎:「お、なんや? なんや?」

陸奥先生:(胸倉をつかんで、ひそひそと)「あれほどカンニングはするなと言っただろう、成瀬」

金太郎:「疑うんでっか? なら、証拠見せてくださいよ、証拠」

陸奥先生:「くッ」(つかむ手を放してから、教室の中に戻る)

GM:んで、テストがもうすぐ終わろうとしてるとき……ひとりの男子生徒が立ち上がる。

チャーリー:ホワット?

GM:手にはカッターナイフを持ってるぞ。で、先生に向かってダーッシュ!

一同:オイオイオイ……!

金太郎:「ちょっ待て、お前何しとんねん〜!」

GM:そう思うなら、サイコロ振ってみよう。

涼:ボケがキツイで、アホぅ〜!

金太郎:駆け寄って、手を蹴るでー!

GM:では、『技』で2回、『体』で1回判定を。『体』には、プラス20の修正を上げよう。

金太郎:わいの『技』の値は、ちょっとしたもんでっせ、ふふ。(コロコロ)……うをー、いきなり失敗しとるーッ!

GM:机で足を打ったな(笑)。

チャーリー:では、僕が手近なモノ……筆箱とか投げつけマース。

涼:まず、男子生徒に気づくかどうかだろ。

GM:そうだね、試験中だしね。てことで『心』で1回、『技』で2回判定するのだ。

チャーリー:絶対失敗するぅ〜! (コロコロ)あ、成功してる。筆箱つかむのも……(コロコロ)成功してマース!

GM:筆箱ねぇ……。最近は、フニャフニャしたヤツが主流じゃないの? こんなのぶつけられても、止まるかなぁ……。

チャーリー:なら、どーしろっていうんデース!(半分キレかけ)

GM:横からタックルでもすれば? (すでに行動宣言の後だから、ホントはやり直しはきかないんだけど……まあいいか)『技』で2回判定ね。

チャーリー:(コロコロ、コロコロ)2回目で失敗ぃぃー!(怒)

GM:追いついたけど、金太郎につまずいたかな?(笑)
 

 そしてふたりは──クラス中の生徒が──信じられないものを見た。

 陸奥先生が、冷静にナイフをさばいたかと思うと手首を取り──ひねって投げ飛ばしたのだ。

 男子生徒は宙を舞い、黒板にぶつかり、気絶した。
 

金太郎:「なんやセンセ……強かったんかいな……」

チャーリー:「これじゃ僕たち、ピエロデース……」

GM:ちょっとした騒動になるね。……で、陸奥先生の人気がますます上がるワケだ。

浩之介:その男子生徒は、どんな子?

GM:普段はおとなしい子だよ。

チャーリー:そういうヤツの方が、キレたら怖いんデース。

涼:そんなことはどうでもいい。それより、今日何日かってことの方が大事だぞ。


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