MOND REPLAYV


chapter16

[傷あとをたどれば]

ヴィゾフニル編:2


生きてきたこと。
罪の証。
傷をなぞれば、
赤い時間が流れ出す……

 ヒイラギは手動の扉を開け、自室に入った。

 物に触れることによって、自分が『ここにある』ことを確認する。
 

(そうやってこだわっているから、逆に忘れられないんだ……)
 

 食事もいらない。トイレにも行けない。

 ニセモノのふれあい。プログラムされた思考。

 消えることのない明日……

 ヴィゾフニル。永遠を求めるヒトが集う場所。

 彼らは不完全な永遠にしがみつき、生きていく。
 

(わたしは……限りある命で、彼とともにいたかった……)
 

 その思いがあるなら、君はもうプログラムじゃない。僕たちと同じだ。

 そう言ってくれた人がいた。愛を告白してくれた人もいた。
 

(正直、かなり嬉しかったけど……)
 

 その思いもプログラムされたもの

 そう考えて、落ち込んでしまう。

 その思いもプログラムされたもの

 元気を出さなきゃ、と自分をはげましたり。

 その思いもプログラムされたもの

 巡る想い。ループする思考。

 それさえも、プログラムされたもの
 

「でも……」

 今日は、あの人に逢えた。

 ずっと逢いたかった人。

 4歳でもなく、12歳でもなく、16歳になった彼に――

 あの別れのときの、あの姿のままの、やさしい瞳――

「――じゃなかったな……。なんか、目つき悪かったような……」

 一瞬現実に引き戻されそうになって、ヒイラギはブンブンと頭を振った。

 やっと逢えたのだ。
 

(私は今……嬉しい。たぶん、浮かれてる……。喜んだり、不思議に思ったり、はしゃいだり……)
 

「そうだ、お茶を持っていってあげよう♪」

 しかし……その思いも、それが導き出す行動も、プログラムされたもの……

 ヴィゾフニル中央図書館『永劫回帰』で『本』をあさる朝顔組の面々であるのだが、さてさて――
 

リューセ:(コロコロ)成功してるよ。

GM:じゃ、これ引いて。
 

 GMが取り出したのはトランプ。黒カードが10枚赤カードが9枚あり、黒が1〜10を赤が11〜19を表している。
 

リューセ:じゃあ……これ。赤の7。

GM:見つかった資料はこれね(紙切れを手渡す)。

リューセ:えーと……『鐘が鳴らなくなった日』?
 

鐘が鳴らなくなった日
 今月24日、ヴェルザンディの「八点鐘」のうちの7つが一斉に停止するという前代未聞の事件が起きた。
 原因は鐘に用いられていた輝石がエネルギーの供給を停止したため。
 専門家の間では「輝石エネルギーが急速に消費されたため」との説が有力だが、
 なぜそのような現象が起きたのかは未だ不明である。
                         (テーレ1120 第10の月)
 

サリース:えーと、黒の3。

GM:これだ。

サリース:んーと、『アムリタ』……だって。
 

アムリタ
 アムリタとは『神の水』である。
 その水は『神』の力を秘めていると言われ
 口にしたものは不老不死になるという伝説も各地に残っている。
 

ガンバ:アムリタというのは高校三年生で――

オードー:それは大仁田。

アルバス:ツッコミ早いな、おい。

GM:さ、どんどんサイコロ振ってよ。

アルバス:お、クリティカル。

GM:クリティカルは資料が2つ見つかったことにしようか。
 

クックルックルーフに関する疑惑(テーレ982)
 クックルックルーフに関して以前「『虫』のような生態である」という論文を発表した
 ハガイ博士に反論の声が上がった。
 それによると、クックルックルーフは明らかに「虫」とは違う生物であり、
 そのほとんどがまだ謎のヴェールに包まれている状態であるらしい。
 それに対しハガイ博士は反論。自分の研究対象となったクックルックルーフは
 「虫」であったと再度発表した。
 この論争は、ハガイ博士のクックルックルーフは「亜種」であったという結論で
 一応の決着を見せた。
 

巨人(ネフィリム)
 ネフィリム──「知恵ある巨人」である彼らは、優れた頭脳と、不老不死の肉体を持つ。
 巨人は造られし存在であるとともに至高の存在であるのだ。
 

アルバス:「――至高の存在であるのだ。さあ巨人たちよ、お前たちの力を、ぞォんぶんにみーせーつーけーてーやるがいい!!」

リューセ:……なんで料理の鉄人なのよ。――私はこれね。
 

大いなる遺産
 その昔、大いなる「天人」の末裔は、空に舞い、雷と嵐を呼ぶ「雲」を創造した。
 その名を『神の戦車(メルカバー)』という。
 

リューセ:「『大いなる遺産』ってこういうものらしいよ」

アルバス:(コロコロ)あ。ファンブル。……もうやだ。オレ、資料あさりやめる。

リューセ:もう……。次はこれね。
 

天才医師現る!?
 先日アガートラームで起こった事故で、片足を失ったAさん(42)。
 なんと彼の脚を元通りに『接合』したというとんでもない話が舞い込んできた。
 手術を行ったのはドクターJと名乗る謎の医師で、
 「私は神の意志にしたがう選ばれしドクターだ」と述べているという。
 

ゼナ:ボクも見つけました。……『疫風』?
 

疫風
 南から吹く疫風が全てを枯らしていく……
 誰にも止めることはできないのだろうか……
 

オードー:珍しくおらが成功しただ。
 

またも漁船行方不明
 水上都市トールの沖合で、またも漁船が行方不明になるという事件が起きた。
 トール水上保安委員会の話によると、
 Oさん(36)の乗った漁船が立ち入り禁止区域である湾外に出て行くのを確認。
 三度警告を発するも通信が途絶え、そのまま行方が知れなくなったという。
 委員会は「探索隊を湾外に派遣したが、発見される可能性は少ない」とコメントしている。
 

サリース:あたし、クリティカル。

GM:(を、やっと出たか)はいこれ。

サリース:あははははははははははははは!(大爆笑)
 

美少女旋風エロマンガー MNN公式設定資料集(初版)
 ネオ宇宙世紀0123。
 謎の宇宙兵器軍団と戦う3人の美少女たちがいた。
 その名はアイ・カイ・マイ!
 彼女たちは変形合体ロボ・エロマンガーに乗り込み、今日も戦い続ける!
 

サリース:もう一個はこれね。
 

大いなる遺産
 ひとりの女性が、神から箱を託された。
 その箱には全てがつまっていた。
 だがその箱が開いたとき、あらゆる災厄が飛び出したという。
 

アルバス:あのさ、どうせ全部引くことになるんだったら、最初から全部見せろって。

GM:それじゃつまらないじゃん。この中に重要な情報がいっぱいあるんだから、ちゃんと読んでおいてよ。

リューセ:あ、クリティカル。
 

究極の治癒マシン
 いかなる肉体破損も原子レベルで再生する究極の治癒マシンが完成した。
 完成させたハガイ博士は「これによりあらゆるケガ人の治療が可能になる」と述べている。
 このマシン──TN−R型は現在まだ試作の段階であるが、
 近いうちにトールの病院で採用されることが決定した。
  しかし、安全性に問題があるとして医師団の中では反対の声も上がっている。
 

輝石に関する考察
 輝石とはマナの結晶体である。
 輝石は常に微量のマナ・エネルギーを発しており、地上に満ちたマナとの間に
 特殊なフィールドをつくる。その反発力によって宙に浮くわけである。
 輝石は主にウォフ・マナフの鉱山で発掘されているが、発掘量は年々減少している。
 

アルバス:じゃ、もういっかいだけ……(コロコロ)あ、成功。
 

女神オファニエル
 女神オファニエル──背に美しき翼を持つ神は、ほとんど天人の記憶に残る事なく
 歴史の表舞台から消えた。
 その後は、一部のオファニエル信者が細々とその布教活動を続けるのみとなり、
 九割以上はテーレ信者となったのだ。
 そこには意図されたオファニエル信者の排除があったとも言われるが、真相は不明である。



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