豪華で品のいい天蓋。ふかふかのベッド。窓の外から聞こえる小鳥の声。
シーツのすれる音に目をやると、横に女性が眠っている──赤い髪の女性が。
GM「──という状況なのだ」
アルバス「……サリースに似てる……? けど違う……?」
GM「やたら豪華な寝室。そして隣で寝ている裸の女性」
アルバス「オレも裸?」
GM「君はちゃんと服を着てる」
アルバス「『アルバス』としての意識はあっていいの? それとも別人格?」
GM「えーとそうだな……アルバスと言えばアルバスだけど、別人格だと思った方がやりやすいかも。『ここ』にいることを自然に受け入れていいよ」
アルバス「てことは『いいひと』でもいいんだな? わーい!」
ゼナ「わーいって……いつもムリして『アルバス』を演じているようには見えないけど(笑)」
アルバス「アルバスがいたって自然体(笑)」
と──コンコンコンとドアがノックされる。
女性の声「王子? 起きてください、王子」
ゼナ「自分が王子だってことは分かってるの?」
GM「分かってるよ」
アルバス「いきなり王子げな言われてもくさ」(←なぜか博多弁)
「アル王子? 入りますよ?」
そう言って入ってきたのは、まだ若い、長い黒髪の女性だった。
ああ、ヒイラギか──ということが『僕』には『分かる』
ヒイラギ(ベッドの女性を見て)「サラ! あなたまた王子の寝室に勝手に入って!」
サラ(笑って)「未遂なんだから勘弁してよ」(服を羽織り、ベッドから降りる)
アルバス「……??? どうなってんだ?」(プレイヤー大混乱)
ヒイラギ「お父上がお呼びです。早く着替えていらしてくださいね」
侍女たちが現れて、てきぱきと着替えを手伝ってくれる。
アルバス「オレ……王子?」
GM「そうみたいだね」
王の間──
GM「アルバスが王子で……ゼナにはこのキャラをやってもらうね」
ゼナ「これは……男の子?」
GM「青年だよ。この国の元宮廷魔術師で現在若き宰相である、ゲオルギウス」
ゼナ(ゲオルギウス)「ゲオルギウス? イヤな名前かも(笑)」
GM「ユンケにはこれをやってもらう。大司祭の娘、ユナ=イリス=フォン=ヴァイスローゼ」
ユンケ(ユナ)「分かったわ」
ゲオルギウス「イリス……?」
GM「さっきの赤い髪の女性が、城につかえる高級娼婦、サラね。サリースにやってもらうつもりだったキャラなんだな」
アルバス「結局あいつはそういう役か」
GM「で、君がアールマティ王国の第1王位継承者、アヴァロン=F=アールマティだ」
アルバス(アヴァロン)「アールマティにゲオルギウスにイリス? どっかで聞いたような名前ばっかりだな……」
GM「んで、ゲオルギウスの隣にいるのが宮廷騎士のタナトス」
アヴァロン「タナトスぅ?」
GM「とは言ってもアルバスたちが知ってるタナトスとは違って、髪は黒くて短いし、顔も違う」
アヴァロン「アールマティって……エスペルプレーナってアールマティの遺産じゃなかった?」
GM「そうだね」
アヴァロン「やっぱりそうか。……よかった、オレにも記憶力というのが存在してたみたいだ」
離宮にいる王妃(ただし妾)に届け物をしてほしい──
王の用とは、ちょっとしたお使いだった。
GM「で、途中危険もあるだろうから、護衛にタナトスとゲオルギウス、それからユナを……」
アヴァロン「ちょっと待て。離宮ってどこにあるんだ? 城の中じゃないのか?」
GM「街を出てさらに山をひとつ越えたところ。結構遠いよ」
アヴァロン「桂離宮みたいなものか。──承知しました」
ゲオルギウス「届け物とは?」
GM「包みを渡される。食べ物かなんからしい」
アヴァロン「正妻がいる前で、よくそんな頼みごとできるな。……女の嫉妬は恐いぞ」
とまあ、そういうワケで。
にわかに結成された王子パーティーは、離宮を目指して旅立つのであった──
GM「離宮に行くには山ひとつ越えないといけないのだが、近道もある。山のふもとにある遺跡を通ればいいの」
ゲオルギウス「その代わり、危険だとか?」
GM「そう。ちょっとしたダンジョンになってるし、モンスターも出る。だが届け物はなまものだ」
タナトス「王子、修行がてら遺跡を抜けていきませんか? 危なくなったらわたしも手を貸しますから」
ゲオルギウス「危なくならないと貸してくれないのな」
アヴァロン「ま、いいでしょう。行きましょうか」
ゲオルギウス「同じく」
ユナ「にゃんにゃー♪」
アヴァロン「なまものって書いてありますしね」
ゲオルギウス「マトモだ……」
アヴァロン「今回はマトモに行くよ」
ゲオルギウス「いつまで続くことやら……」
GM「では街を出て、遺跡の入り口までてくてくと。──中に入るよ?」
アヴァロン「うん」
ライトで照らしながら遺跡の中へ。
石造りの道を奥へと進むと、やがてT字路に出た。
GM「右と左、どっちに行く?」
アヴァロン(ちょっと考えて)「左」
ゲオルギウス「アルバスみたいに即断しないんですね」
タナトス「ゲオルギウス、王子は左に行くと言っているぞ」
ゲオルギウス「そのようだな」
実は右が正解。そしてこのふたりは正しい道順を知っているのだ。
タナトス「ま、修行ということで」
ゲオルギウス「そうだな」
左へ進むと、小さな部屋に出た。扉が正面と右側にある。
アヴァロン「右」
GM「じゃあここで『心』の判定だ。注意して歩いてるなら能動、ぼけっと歩いてるなら受動の値で」
アヴァロン「『受動』だね(コロコロ)──失敗」
GM「じゃー、落とし穴にひゅーーーんと。とっさに王子に手を差し伸べるなら『技』で判定して」
ゲオルギウス(コロコロ)「ファンブル(笑)」
あわれ王子は穴の底へ。
アヴァロン「ダメージは……鎧で止めた」
ユナ「深さは?」
GM「うーん、2メートルぐらい?」
アヴァロン(のプレイヤー)「俺が昔落ちたくらいの穴だな」
GM「自転車でね」
アヴァロン「有名な話だね」(身内では)
何とか穴からはい上がり、さらに奥へ。
GM「道が三方向に分かれてる。鳥の足跡みたいなかんじね。どっち?」
アヴァロン(サイコロを振って)「右」
GM「ちょっと進むと扉がある。どうする?」
アヴァロン「開ける」
タナトス(小声で)「ああ、そんないきなり……」
ユナ「にゅ、にゅーん♪」
アヴァロン(振り返って)「え?」
ユナ「ううん、何でもないよ」
タナトス「王子……それがワナだったらどうするんです?」
アヴァロン「そりゃ……かかるんじゃないかなァ」
ゲオルギウス「だんだんアルバスに戻ってきてますよ……」
ユケ「メッキがボロボロはげてきてるね(笑)」
アヴァロン「忠告されたなら……従おう。扉を調べてみる」
GM「毒針のトラップが仕掛けてある」
タナトス「王子に罠解除はムリですよね。……サラに来てもらえばよかったかな……」
ユナ(サラの名を聞いてムッとした顔になる)
ゲオルギウス「どうした?」
ユナ「嫌いなんじゃない? 先天的に」
GM「恋敵だからしょーがないよね」
アヴァロン「恋敵ってことは……僕がゲオルギウスに好かれてるってこと?」
GM「そっちじゃないでしょ(笑)」
タナトスが扉を一刀両断にし、一行は部屋に踏み込んだ。
アヴァロン「扉を斬ればワナは解除されるのか? それはなんか間違ってないか?」
GM「どこを斬ればいいか分かってるんだよ、きっと」
アヴァロン「そういうものか……?」
GM「で、部屋の中ね。奥に扉がひとつ。中央にあからさまに怪しい宝箱が2個置いてある」
アヴァロン「高田直子が2個?」
ゲオルギウス「誰です、それは」
GM「宝箱!」
アヴァロン「気にしない。──奥の扉を開ける」
ユナ「ふんふふーん♪」
扉の向こうはまた通路。
奥に進むとまたT字になっており、正面の壁に文字が彫ってある。
『右は天国 左は地獄』
アヴァロン「『地獄』へ行こう」
GM「左ね。しばらく行くと通路は右に曲がって、突き当たりに扉」
アヴァロン「調べてみる。(コロコロ)成功」
GM「魔法のカギがかかってる」
アヴァロン「……引き返そう」
ゲオルギウス「魔法を使うチャンスなのに……」
アヴァロン「『アンロック』の魔法って使える?」
GM「レベル的には十分使えるよ」
アヴァロン「じゃあ使ってみよう。(コロコロ)成功してる」
タナトス「おお、王子が……」
ゲオルギウス「ついに魔法の扉を……」
アヴァロン「誰でも余裕なんじゃないの?」
ゲオルギウス「あれだけ魔法の勉強をしなかった王子が……(笑)」
タナトス(潜在能力は高いからな……)
アヴァロン「侍女の部屋とか覗くときに必要だったから」
ゲオルギウス「王子、なんてことを」
タナトス「覗くんですか?」
アヴァロン「それは言わない約束だ。僕と君との約束だ」
ゲオルギウス「……どういうイミです?」
アヴァロン「分からん(笑)」
ユナ「中に入ろ♪」
大きな部屋だった。
中央に石板があり、文字が彫ってある。
GM「ここは『音色の部屋』──とでも言いますか、みなさんの心の音色を聞く部屋であります」
アヴァロン「はあ」
GM「プレイヤーは3人いるんだよね。じゃー、今から作詞をしてもらいます。Aメロ・Bメロ・サビね」
ゲオルギウス「変身歌謡ショー!(叫)」
GM「歌詞は……ひとり3行ぐらい、かな」
ゲオルギウス「さっきテレビで見たからって……」
GM「まあまあ。XX(ぺけぺけ)のシナリオなんてそんなもんだって」
お題をいくつか書き出し、サイコロを振る。
GM(コロコロ)「お題は……『失恋』に決定!」
アヴァロン「ホントはもと歌がないといけないんだけど……(ガサガサ)いいのが見つからないな」
結局──
ひとり3行の作詞。
特にもと歌はもうけないが、いかにも歌詞っぽいように書く。
テーマは『失恋』
──ということで、プレイヤーたちは各々作詞を始めた……
GM(あう……ヒマかも……)
アヴァロン「みんな同じような歌詞だったらイヤだな」
GM「確かに。………………。全部mmm−(ムムムー)ってのはダメだからね」
ユナ「あ、なんで分かったの?(爆笑)」
GM「いやなんか……ピンときた(笑)」
アヴァロン「しかし……今までロクに恋愛をしてきたことがないオレたちに作詞させようってのがムチャだよな」
GM「片思いでもいいんじゃない?」
アヴァロン「それもないな」
ユナ「最初女性の語り口で、サビだけ男性ってこともあるんだよね?」
GM「それはそれでいいんじゃない?」
ゲオルギウス「あ、『部屋』って漢字忘れた……」
GM「それはヤバイぞ」
アヴァロン「♪こーしーふるーいっつまえパル♪」
んで、待つこと10分───
GM(歌詞を見て)「みんなまともだな……。しかも3つがあまり破綻してない」
アヴァロン「なんだ、つまらん」
GM「では発表しまーす! Aメロがゲオルギウス、Bメロがアヴァロン、サビがユナね」
いつの間にか隣にいた君 すでにトキメキはなく
涙ぐむその顔も 胸にひびかない
沈黙がせまい部屋にこだまする
君のいることが当たり前だったあの日
何も考えず時だけが流れてた
降る星に 降る雪に 願いは届かなかったけれど
神様ワタシにください
あなたなしで生きていく強さを
自分だけで歩いていく勇気を
アヴァロン「いいじゃん」
ユナ「口調が途中で男から女に変化しちゃってるのが気になるけどね」
GM「こんだけできたら上等上等。オチはつかなかったけど」
奥の扉が静かに開き始める。
そして彼らは最後の部屋に足を踏み入れた。
GM「タナトスとゲオルギウスには分かるけど、今までこの扉が開いたことはなかったの。つまりここに入るのはゲオルギウスも初めて」
ゲオルギウス「そうだったのか……」
アヴァロン「みんな作詞のセンスないんだね」
ユナ「無骨な武人ばかりが来たんじゃない?」
アヴァロン「なるほど。だからタナトスは作詞に参加しなかったんだな」
GM「昔苦い経験をしたのかも(笑)」
アヴァロン「で、何があるんだ?」
GM「お墓、だね」
山をくりぬいて造られた巨大な空間。
その中央にひっそりと『それ』はあった。
GM「古墳というか柩というか石柩というか……そういったかんじのもの」
アヴァロン「ひとり用?」
GM「いや、2、3人は入るかも」
タナトス「……こんなところにあったのか……」
ゲオルギウス「どうした? 何か知っているのか?」
タナトス「いや、別に……」
ゲオルギウス「ウソつけ(笑)」
タナトス「お墓みたいなものです。昔の人の」
アヴァロン「先祖のものか?」
タナトス「まあ……そうですね。そうだと思っててください」
アヴァロン「じゃあ手ぐらい合わせていくか」
タナトス(……『聖柩』がここに……。ということは『彼女』も……)
アヴァロン「この奥、ちゃんと出口に通じてるんだろうな?」
タナトス「ここは我々も初めて来たところですから」
アヴァロン「大丈夫かな? この先行き止まりだったらなまものヤバイぞ……」
タナトス(奥を見にいって)「あー、奥は行き止まりですね」
アヴァロン「なんだそれは。……じゃあ天国の方へ行こう」
ユナ「にゃにゃーん♪」
GM「では遺跡を抜けた。あとは離宮まですぐだよ」
タナトス「のんびり行きますか」
アヴァロン「なまもの!」
アールマティ王家 離宮──
GM「謁見の間、みたいなところ。玉座にこんな顔の人が座ってる」
アヴァロン「これって……アルバスママの……ニーヴェ?」
GM「顔はそっくり。その隣にはこんな少女もいる」
アヴァロン「そっちはクリシュナさん?」
GM「プレイヤーは知ってるね。そうだよ。少なくとも外見は」
ゲオルギウス「クリシュナって誰だっけ?」
アヴァロン「『クーア』をくれた人。アルバスに『あなたは澄んだ目をしてる』って恐ろしいことを口走った人(笑)」
ユナ「頭弱かった人(笑)」
アヴァロン「……でも計算合わないよな」
ゲオルギウス「たぶんこれって、大昔の話だよな……。でもタナトスもいるし……」
王妃「よくいらっしゃました、アヴァロン王子」
アヴァロン「アヴァロン王子でなんでアル王子で呼ばれるんだ? アールマティは家の名前のだろ?」
GM「アールマティのアルじゃないよ。アヴァ王子と呼ぶ人もいるけど、それじゃ言いづらいってことで『アル』なの」
アヴァロン「あー……まあいいや」
ユナ「Aをアルって読むのかもしれないし」
GM「まー、そういうことにしといて(笑)。──で、王妃があいさつしてくる」
アヴァロン「こちらが父上から預かってきたものです。どうぞおあらためください」
王妃(かさかさかさ……)
アヴァロン「これは──ドゥラ=ヤッキ!」
GM「あっはっは☆」
アヴァロン「違うのか」
ゲオルギウス「しかも毒入り」
王妃「ではこれ(書簡)を王にお渡しください」
アヴァロン「承知しました。……この人は母親じゃないよね?」
GM「アヴァロンの母親ではないよ。アルバスの母親にはよく似てるけど」
アヴァロン「会うの初めてじゃないよね?」
GM「何回か会ってる。でもクリシュナ(のそっくりさん)に会うのは初めてかな」
アヴァロン「そうなのか」
タナトス「王子、わたしはお后と少し話があるので、ちょっと向こうでお茶でも飲んでてください」
アヴァロン「大人の話ってヤツですか……」
タナトス「不倫とかじゃないので御安心を」
アヴァロン「タぁナぁトぉスどのォ?? 不倫てのはどういうイミでおじゃる?」
ゲオルギウス「誰だよ、お前(笑)」
客室──
GM「ちょっと『心』で判定してくれる?」
ゲオルギウス(コロコロ)「ファンブル……。誰かに呼ばれた気がしたのだが……(笑)」
アヴァロン&ユナ「「成功」」
GM「ここのお手伝いたちの話し声が聞こえてくる」
GM/お手伝い1「『ねえ、王子様が来てるらしいわよ』」
GM/お手伝い2「『え、あの噂の王子が?』」
アヴァロン「……むかつくな、なんか……」
GM/お手伝い3「『噂って?』」
GM/お手伝い1「『知らないの? あの王子、実はここのお后様の子供だって──』」
アヴァロン「……まあ、話の流れからいったらそうなるんだろうな。別にいいんじゃない? 王位とかに興味ないし」
タナトス「こら、何を無駄話してる!(部屋に入ってきて)お待たせしました、王子」
ゲオルギウス「さっき私は誰かに呼ばれた気がしたのだが……」
タナトス「何を言ってるんだゲオルギウス。お前ともあろう者が……」
アヴァロン「さ、用事も済んだし、帰るか」
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帰る途中、公園を通った。
公園と言っても遊ぶものはほとんどなく、だだっぴろい草原が広がっているだけなのだが。
──昔はここで遊んだりもしたな──
アヴァロンは目を細めた。
小さな丘の上の大きな木。その向こうに夕日が見える。
黄金の光に目がくらみ、少し目をそらしたそのとき──
木の根元に少女が座っているのに気づいた。
膝を抱え、じっとこっちを見ている──気がする。
──さっき会った?──
離宮にいた少女によく似ている。
いや……違うか……
服装が、髪形が、雰囲気が……違う。
だけど……
──どこかで会った──
ひとつの名が浮かぶ。
「……ソフィア……?」
そう思ったとき、再び光に目がくらんだ。