/ / 地平線に広がる雲。
苺を煮詰めて作ったジャムの香り。
傷ついた兵士の体温。
巻かれていく包帯の圧力。
転んで擦りむいた膝の痛み。
冷たい雨。
大好きだった焼きたてパン。
大地を渡る風。
熱をおびた、姉の唇の感触。
やさしく包み込む闇。
……約束。 |
そんなすべてを……あたしは忘れていくのだ。
………………
やさしい風が頬をなでていく。
そっと。目を開ける。
・
それはどこまでも高い青だった。
それは、はるかな青だった。
・
ああ
どこまでも
続いていく青空
こころを映す
深く澄み渡る海
あおいろ
MNN Presents
【MOND REPLAY 完結篇 】
prologue[空の青 水の青]
アリア・ミリアル・エルズミーアは呆然としていた。
見上げた先にどこまでも広がる青。
それが空だということに、しばらく気がつかなかった。
信じられない。空が、青いなんて。
……ここが、<真なるアルカディア>なのかな。
青い空。緑の草原。心地よい風。
まだ違和感があるが、これが楽園なのだと、そう信じられた。
まだ、違和感が……
おしりの下に……
「きゃッ!!!」
おしりの下に、男の人が倒れていた。
正確には、尻にしいていた……文字通り。
「あの……ここは、どこですか?」
アリアの問いに、灰色の髪と碧眼の青年はぶすっとした顔で答えた。
「……重い」