チャーリー:なんで僕の家なんデスか?
金太郎:そりゃ、広いし、食べたり飲んだりし放題だからや。
二葉:「もうちょっと待ってね。もうちょっとで、来ると思うから」
チャーリー:「誰を呼んだんデス?」
二葉:「織葉」
一真:「新崎を呼んだのか?」
二葉:「だってたぶん、織葉はすべてを知ってるから。……あたしたちが知らないことも、知らなくてもいいことも」
GM:そのとき、呼び鈴が鳴る。
チャーリー:「来たみたいですね」
新崎織葉は、学校での印象と全然違っていた。
眼鏡を取った彼女はとても美人で……それでいてどこかほえっとした雰囲気を持っている。
織葉は、細かい装飾をしてある箱を小脇に抱えていた。
金太郎:「新崎がこんなに美人やなんて、知らんかった……」
チャーリー:「僕もデース……」
金太郎:「一真は、知っとったんか?」
一真:「どうでもいいだろ、そんなこと。それより早く、事情説明してやれよ」
GM:じゃ、織葉に説明したつもりで、話してもらおうかな。
涼:時が戻った。同じ3日間を繰り返している。
チャーリー:『フォーチュン・ストーン』という欲望を増幅させる石のせいで、おかしくなった人がいマス。
金太郎:生徒が突然キレたりしたな。
浩之介:行方不明の生徒がいたり。平が死んだり。
GM:それから?
涼:他に何かあったっけ?
GM:よく思い出してごらん。日常ではありえないことが、いろいろあったでしょ。
隆志:2−Aの前で変な声を聞いた。『金三(キンゾウ)』だっけ。地名か人名みたいな。
GM:カナゾウだってば。──他の人は? チャーリーはたぶん分からないと思うけど、涼や金太郎は、絶対気づくと思うんだけどなぁ。
涼:……なんだ?
金太郎:……さあ。
チャーリー:ホントに覚えてないデスか? 僕でも覚えてるのに……。
GM:あっただろ? ほら、部活で。
涼:あ、あああああ、ヤケドか。
GM:金太郎は、授業中。ヒント、居眠り。
金太郎:……落書きか? 眼鏡みたいな。
GM:そう。
織葉:「あなたたちと二葉は……たぶん、同じといえば同じモノたちでしょう。つまり……『特殊能力』の持ち主です」
金太郎:「特殊能力やと?」
織葉:「ええ。その力は非常に抽象的で、個人差があるモノです」
ここで、織葉は涼をじっと見つめた。
織葉:「あなたの能力は……『痛みを完全に消せる』というものです」
涼:「なるほど」
織葉:「成瀬君の能力は、『眠っているときに“敵”を描ける』」
金太郎:「へえ」
織葉:「結城先生の能力は、『一瞬過去が聞こえる』」
結城:「ふむ」
チャーリー:「僕にも……あるんデスか?」
織葉:「あなたのは……『集中すると喜怒哀楽が移せる』能力です」
チャーリー:「はあ?」
GM:栞を抱き締めたとき、彼女の落ち着きを取り戻したことがあったでしょ?
チャーリー:げ、あれか……。
浩之介:ほとんど反則だぞ、それは。……わしは?
GM:君のは、『いつも“かなしみ”を夢に見る』能力。
浩之介:あの……夢か……。
そのとき──一真のケイタイが鳴った。
一真:「もしもし、ああ、信也か。今どこだ? まだ東京? お前、まだ遊んでんの? ……え、あ、ああ、そりゃそうだ、あれは平日じゃないとダメだろ。お前、知らなかったの? マジ? ……だせー。ああ、早く帰ってこいよ。うん、うん、ああ、それじゃな」
チャーリー:信也って、あの金髪でロンゲの?
GM:そうだよ。
チャーリー:今のも、伏線?
GM:そうだよ。
隆志:思い出した。あの声、七曲信也の声だ。
GM:そして小沢の『集う』という言葉。……さ、以上のことを頭に入れて、今回の一連の事件の謎を解いてくれ。
一同:えええええ〜!
GM:『時が繰り返す』ことは、ちょっと頭から外しておいていいや。──さて、分かるかな?
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GM:それじゃ、考えていってみようか。とりあえず君たちの『敵』を突き止めるためのヒントは2つ。眼鏡と思われる絵と……『カナゾウ』という、とある言葉の一部。
隆志:それは2−Aの七曲信也の声だった。彼は土日に東京に遊びにいってて……。──分かった気がする。敵も、石のことも。
GM:お、分かったか。(こっそり答えを聞いて)そのとーり、隆志、正解。
チャーリー:ホントに分かったデスか? すごいデース……。──信也が言ってたことは……『オレもやっちゃおうかな』みたいなことデシタ……よね? うーん……。
みんな、ずいぶんと長い間、あれこれ考えた。
GM:最初っから思い出してみたら?
浩之介:最初って……加藤チャゲとタモリが東京湾に浮いてて……
金太郎:──って、まさか『敵』って、タモリ?
涼:確かにアイツは眼鏡──サングラスだが、じゃあ『カナゾウ』は?
GM:平日だったら大丈夫なのに、土日だとやってない、東京新宿といえば……?
チャーリー:『笑っていいとも!』……? ……っていうか、『笑っていいかな?』!?
金太郎:え、あれって『笑っていいかも』やろ?
隆志:それは金太郎が後から言ったことで、GMが言ったのは、『笑っていいかな?』だよ。
チャーリー:じゃあ『カナゾウ』って……
GM:『笑っていいかな?』──
チャーリー:──『増刊号』!?
金太郎:確かに『増刊号』は録画したヤツやから、日曜にアルタに行ってもあかんなぁ……。
涼:まじ……? でもタモリが敵って、どういうことだ……?
GM:石のことも忘れないでね。
隆志:実は、これが『高校生TRPG』だというのが、最大の嘘なんだよ。
GM:そうだね。最初の方で、隆志が正解言っちゃったんだよね。
チャーリー:『フォーチュンストーン』が……『輝石』?
GM:『輝石』には……というか、『大いなる遺産』には、どんな『力』があった?
涼:『願い』を叶えるんだろ?
チャーリー:そして人の欲望を……AHAHAHAHAHAHAHAHAHA!(爆笑)
GM:分かったみたいだね。タモリと加藤チャゲが異世界『イーゼリア』から持ってきてしまい、東京湾上で砕け散った『輝石』のかけら──それが『フォーチュンストーン』の正体。
それは、遠い遠い異世界でのおはなし。
そこには、神様の力を宿した『石』がありました。
その『石』には不思議な力があり、人々の『願い』を叶えてくれます。
でも心の弱い人間は、『石』の力によって自らの醜い心を暴走させてしまいました。
GM:詳しくは『MONDリプレイ第三部』を読んでもらうことにして……まあ、そういうこと。もちろん『輝石』には『願い』を叶える力なんてないんだけど、人の心をグラッと動かすぐらいの力はあったんだね。特に、『こっちの世界』の人間たちにはよく効いたみたいで。
涼:「にわかには信じられんが……つまり、この『石』は異世界のモノなんだな?」
織葉:「そうです、この世界にあってはならないモノなのです」
金太郎:「小沢の言っとった『集う』ってのは何やったんや?」
織葉:(『石』を手にとって)「この『石』そのものの『願い』……『より多くの“想い”を自分のもとへ』と『石』自身が願ったのだと言ったら……信じますか?」
涼:「そうなんだと言われたら、そうなんだろうな……。すぐに納得はできんが」
隆志:「異世界に持ち込まれたり、人の──地球人の心に触れたりしたせいで、『石』が変質したのかもしれんしな」
涼:「で、どうしたらいいんだ? まさかこれで終わりってワケじゃないだろ?」
織葉:「『石』の核となる部分があるはずです。その核を……この『匣』に封じます」
織葉は、ひざの上の『匣』を、テーブルの上に置いた。
二葉:「きれいな箱だね……」
織葉:「『パンドラの匣』よ……からっぽだけど」
金太郎:「で、その『核』がどこにあるか、分かっとるんか?」
織葉:「それは成瀬君の『力』が教えてくれてるわ。『石』をこの世界にもたらし、眼鏡をかけたもうひとりの人物──」
一同:「加藤チャゲか!」
その後……話し合った結果、加藤チャゲのコンサートに乗り込むことになった。
『明日』が10月6日でも、9日でも、だ。
チケットは……チャーリーが金の力で何とかすることにしたらしい。
二葉:「それじゃ、また『明日』ね」
涼:「なあ」
織葉:「はい?」
涼:「あんたは全てを知っていた。なのに、なんで今まで力を貸してくれなかったんだ?」
織葉は微笑み……何も答えなかった。
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浩之介:「ここまで連れてきたのはいいが……どうしよう、この子。とりあえず……どこか行かないように見張っておくか。目を離すとすぐにどこか行こうとするからな。……でも……どこの子なんだ?」
浩之介は気づいていなかった。その子が、行方不明になっていた女子生徒であることを。
そして浩之介はたぶん一生気づかない。
彼が彼女を保護したおかげで、時の繰り返しが終わったことを。
生徒が誰ひとり傷つかない、平和な3日間がやっと訪れたことを。
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