たぶん。
すべての始まりは、あの夜だったんだろう。
星がきれいで。
でも 『月』 にはうっすらと雲がかかってて。
まるで羽根を広げているように見えた、あの夜。
そう。
すべての始まりは、「天使の夜 (エンジェルナイト)」
から……
3月のある日のこと。某鹿児島県の、とある場所にて――
GM(ゲームマスター):「さーて、今回から新シリーズだよ。舞台も南キャンバス大陸に移り、キャラクターも一新。新たな気持ちでがんばりましょー」
一同:「はーい」
プレイヤーB:「あれ、プレイヤーAは?」
GM:「ヤツはアメリカに行ってて、今回は不参加だよ。あとプレイヤーGは次回から登場予定」
プレイヤーB:「ふーん……」
GM:「さて、今回は新しい大陸なんで何も決まってない。まずはみんなでお金の単位を考えるのだ!」
プレイヤーD:「なんだそりゃ」
プレイヤーF:「えーと、お金の単位だよな……――『タラン』てのはどうだ?」
プレイヤーE:「1タラン、2タラン、ですか?」
プレイヤーD:「『1タラン、たらん』とかって言うのか? シャレにもならん」
GM:「でも今回のキャンペーンには丁度いいかもね。では『タラン』に決定! では次に距離の――」
プレイヤーC:「もういいって。めんどくさいから『メートル』でいいよ」
プレイヤーF:「さて、それじゃ始めていいのかな?」
プレイヤーD:「なんでプレイヤーがGMやるんだよ(笑)」
プレイヤーF:「――さて、君たちは今、村の庄屋の家にいる(笑)」
プレイヤーC:「庄屋……?」
プレイヤーB:「それは世界が違うんじゃ……」
GM:「…………」
プレイヤーF:「そこへ悪代官の使いがやってきて――」
プレイヤーE:「……もう悪代官って分かってるの?」
一同、爆笑。
プレイヤーF:「時代劇だぞ。悪代官って分かんない悪代官がいるか?(指で目をつりあげて)みんなこんな顔してるじゃねーか。声は太いし」
プレイヤーE:(はまったらしく、まだ笑ってる)
プレイヤーF:「さて代官、そろそろ始めましょうや」
GM:「オレが代官かい。じゃあ始めるよ。もちろん時代劇じゃなくてMONDの方ね」
プレイヤーF:「そりゃそうだ。そのまま時代劇でもいいけどさ」
GM:「えーと、前回から10年が過ぎたと思ってくれい」
プレイヤーB:「前回なんて知りませーん。今回から新キャラなんだから」
GM:「そうそう、さっきも言ったように大陸も移ったから、前のキャラクターのことはすっっぱり忘れちゃってください」
プレイヤーF:「だったら『前回』とかって言うなよ」
プレイヤーE:「まったく、そのとおり」
GM:「では、まずアルバスだけ自己紹介して」
プレイヤーF:「オレ? えーと、九州の海のそばにある某国立大学の薬学部に通う――」
プレイヤーE:「それはプレイヤーの自己紹介!(笑)」
プレイヤーD:「ツッコミ入れない方がおもしろかったのに〜」
プレイヤーC:「おもしろかったのに〜」
GM:「……だってさ」
プレイヤーE:「悪かったですね。こーゆー性格なんです」
プレイヤーF:「今度箱崎4丁目に引っ越すことになりました」
プレイヤーD:「まだ続けるか?」
プレイヤーF:「お、今度のツッコミは早かったな(笑)。ま、そーゆーことでよろしく」
GM:「よろしく、じゃないだろ」
プレイヤーF(以後アルバス):「やっぱり? ――えーと、名前はアルバス=ファルバティス。『白い朝顔』って意味だ。16歳。男。職業は一応封印士」
GM:「封印士とは、魔法を特別な銃(その名も魔法銃――そのまんま(笑))の弾丸やお札に封印することができる(もちろん封印した魔法を解呪することもできる)人たちのことっス」
アルバス:「父親が名の知れた封印士で、オレも強制的にその道にほうり込まれた。はっきり言ってイヤなんだけど、オヤジが強いから逆らえない。で、今は腕を磨くために修行の旅をしている。もちろんオヤジの命令だ」
GM:「GMからの補足設定。アルバスは、簡単には帰ってこれないように自分の故郷のことだけ『記憶封印』されている」
アルバス:「それって実はすごく大変なんじゃないか?」
GM:「そだね。――では、ぼちぼち話を始めることにしよう。まずはアルバスからね」
アルバス:「あ、そうなんだ」
GM:「んで、道が二手に分かれている。右と左、どっちに行く?」
アルバス:(あっさりと)「左」
プレイヤーD:「即断したな」
GM:「じゃ、右に――」
アルバス:「左だ。どーしても右に行ってほしいなら右に行ってもいいぞ」
GM:「ごめんごめん。左に曲がった。で、しばらく進んで右に曲がると――なんと袋小路! で、だんだん足音が近づいてくる」
プレイヤーB:「なんで追われてるんだろうね」
プレイヤーD:「なんとなくじゃないか?」
プレイヤーB:「分かった。下着盗んだんだ」
GM:(違うって)「足音がすぐそこまで迫ったとき、突然アルバスの足元が崩れる」
アルバス:「うを!? 転送空間か?」
GM:「違うよ。ただ崩れただけ」
アルバス:「ただの落とし穴かぁ!」
GM:「足元がふわっとする奇妙な落下感。そして――君は目を覚ます」
プレイヤーE:「ひょっとして夢オチ?」
GM:(うなずいて)「ベッドの上。どうやら宿屋の一室らしい」
アルバス:「ほう……」
GM:「と、どんどんどんと扉が叩かれて、『大変です! 隣の家が火事なんです! 早く逃げてください!』とゆー声が」
アルバス:「そいつは大変だな」
GM:「火事だよ」
アルバス:「火事だな」
プレイヤーD:「ぼーとしてないで何かしろよ」
アルバス:「そりゃ逃げるさ。あえて火の中に飛び込むほどオレはおろかじゃない」
GM:「んじゃ外。結構派手に燃えている。んで、消火作業が始まったり――」
アルバス:「ほう……」
GM:「バケツリレーが始まったり――」
アルバス:「大変だね」
一同:「何かしろよー!!」
アルバス:「やじ馬の一番前で傍観してる」
GM:(しょーがないな……)「『兄ちゃん、手伝ってくれ!』と声をかけてくるおっさんが一人」
アルバス:「頼まれたなら仕方がない。手伝ってやろう」
GM:「しばらくバケツリレーが続く。――と、誰か手元がくるったらしく、アルバスにばしゃっと水がかかる。ずぶ濡れだよ」
アルバス:「あい、やー!」
GM:「――というところで目が覚める」
アルバス:「またかよ」
GM:「んで、なんか股の辺りに濡れた感触が――」
一同:(大爆笑)
アルバス:「16にもなってかぁー!(笑)くそ、こんなときに『物質封印』ができたら、封印して遠くに投げ捨てるのに」
プレイヤーB:「証拠隠滅するのね」
アルバス:「とりあえず、着替えないといけないな」
アルバス、どこまでも冷静……。
アルバス:「ところで今どこにいるんだ?」
GM:「宿屋の一室だよ」
アルバス:「ならさっさとチェックアウトして逃げる」
GM:「で、部屋を出ようとしたとき――目が覚める。また、夢だったみたいだね」
アルバス:「はっきり言って……ほっとした(笑)」
GM:「そんなこんなで朝である。そして、アルバスの当てのない旅がまた始まるのだった――」
アルバス:「始まるのだった――って今の長い前振りはなんだったんだ?」
プレイヤーD:「GMの好きな伏線なんじゃないの?」
GM:「寝小便のとこが?」
アルバス:「そこが伏線なのか!(笑) ――まあいい。今はただの夢ってことにしておこう」
実は伏線でもなんでもないんだな、これが(笑)。