GM:で。そんな3人に蜘蛛型メカが突っ込んでくるぞ。ギチョンギチョンギチョン!
ゼナ:とりあえず、ピカピカ(ライトによる目潰し)再び。
GM:ではピカッと。でもメカの勢いは止まらない。ギチョンギチョンギチョン!
ゼナ:よける。リルルを引っ張って。
GM:ではよけた。ニスロクは反対側によける。で、メカはギャギャギャと横滑りして、壁にぶつかりそうになる。どうやら目がくらんだよーだ。
ゼナ:「よし!」
GM:で、8本の足をぶんぶん振り回しはじめる。
ゼナ:「おじいさん! もう、あの機械はあきらめて、今のうちに逃げましょう!」
ニスロク:「自力で地上にたどり着けるというのだな、少年」
ゼナ:「ここまでだって歩いてきたじゃないですか!」
ニスロク:「道は、分かるのだな?」
ゼナ:「何とかなりますよ! きっと! だから、今は!」
ニスロク:「その言葉、信じるぞ。……ならば、その子を連れて、早く逃げるのだ!!」
ゼナ:「……お、おじいさんは?」
ニスロク:「言ったはずじゃ。あの機械ごと破壊するのはたやすいと。――わしはいいからゆけ! ゆくのじゃ!!」
ゼナ:って言うか、逃げようって言ったのは、殺し合いをやめさせるためなんだけど。
GM:ニスロクもそのへんは多分察してる。でもここで引くわけにはいかない。
リルル:「おじいさんを放ってはいけません!」
ニスロク:「ならばせめて、離れておれ!」
ゼナ:メカはどうしてる?
GM:ばたばたしてる。だんだん視力が回復してきたようではある。
ゼナ:「おじいさんも、行こう!!」
ニスロク:「それは……できんのじゃよ、少年」
ゼナ:「おじいさん……!」
ニスロク:「少年……。お前さんがわしの孫だったら……よかったのにのう……」
バッと翼を広げ、宙に舞うニスロク。
槍がさらにまがまがしく変形し、先端に光が収束していく。
リルル:「!!」
ゼナ:「おじいさん!」
キュゴオオオオオオオオオオオオオ……
光が、放たれる──
どごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!
ゼナ:「うわッ……!!」
GM:衝撃波が2人を襲う。
リルル:「きゃあああああああ……!!」
ゼナ:リルルをかばう。
リルル:「ゼナ!!」(無意識に呼び捨て)
ゼナ:少し吹っ飛ばされて、ドサッ、と倒れ込む。
リルル:「ゼナ、だいじょうぶ?」
ゼナ:答えずに、メカの方を見て立ち上がる。
GM:跡形もない。煙でよく見えないけど。
ゼナ:「おじいさァァァァァァァァん!!」
GM:炭になった人型のモノが煙の向こうに見える、かも。あと、機械の破片とか。
ゼナ:叫んで、メカの残骸に駆け寄る。
GM:そうすっと、上からぱたぱたとニスロクが降りてくる。
ゼナ:それらを見て、立ち止まる。
ニスロク:「無事か……?」
ゼナ:「……あ……あああ……」
ニスロク:「………………」
ゼナ:「……どうして……家族なのに……家族同士で殺し合うなんて……」(ぺたん、と座り込む)
ニスロク:「いつか分かる日が来る。いや……その日が来ないと、分からぬことなのかもしれんな……。 ……親子が、殺しあう日が……」
リルル:「………………」
ゼナ:「絶対……絶対に間違ってるよ……!!」
GM:ニスロクが、すっとゼナたちから少し離れる。
リルル:「おじいさん……まさか……」
ニスロク:「後はこの槍を破壊するだけじゃな……」
ゼナ:ニスロクさんの方を見る。
GM:グッと『力』を内側にため込むニスロク。翼が輝き出し──
ぱん!!
GM:「槍」が、腕と体の一部ごと弾け飛ぶ。血が、辺りに飛び散る。
ゼナ:「!!」
ニスロク:「これで……よい……」
リルル:「おじいさん!!」(駆け寄る)
ゼナ:同じく。
ニスロク:「これで…………いいんじゃ…………」
リルル:「最初から……こうするつもりだったんですね……?」
ゼナ:「おじいさん……」
ニスロク:「わしは……わしは……」
リルル:「早く傷の手当てを! ゼナ君! 何か……早く……何か……」
ゼナ:「な、何か、ったって……」
ゼナ:いろいろ探してみるけど?
GM:包帯とかがちょびっと。
ゼナ:「とりあえずこれで……止血くらいは……」
GM:巻いてみるけど、どんどん血がにじんでくる。ゼナもリルルも血まみれだ。
ゼナ:必死に手当てしようとしてる。
リルル:「あたしに……治癒の力があればよかったのに……」
GM:出血は止まらない。右肩ごと、腕が吹っ飛んだからねェ。
ゼナ:どうしようもない……。
GM:なんか、小声でブツブツ言ってるようだ、が。
ゼナ:聴く。
GM:人の名前のようだ。たぶん、息子や妻や孫の。で、左手がふるふると弱々しくあがる。
ゼナ:「……おじいさん……?」
GM:そっと、リルルがその手を握る。
リルル:「……ごめんなさい……」
ゼナ:「リルル……?」
リルル:「助けて……あげられなくて……」
ゼナ:「……おじいさん……」
GM:一瞬、ニスロクの手に力が入り──
息を引き取った────
ゼナ:「!!」
リルル:「そんな……」
ゼナ:「おじいさん! おじいさん!!」
リルルが、弱々しく首を横に振る。そして──涙。
ゼナは、下を向いたまま歯を食いしばってこらえてる。でも、涙は止まらない。
ゼナ:「どうして……。……分からないよ……。ボクには……分からない……」
わからない……わからない……わからないわからないわからない……
心の中は、ただそれだけ……
かなしくて。ワケわかんなくて。
ナミダが止まらない……
その2時間後、2人はシモーヌの使用人に発見された……
「そう……そんなことがあったの……」
ベッドに横になったリルルの話を聞いて、シモーヌは深く息をついた。
「つらい思いをしたのですね、2人とも」
その言葉に、リルルの瞳がまた潤んだ。
「……違う……」
消え去りそうな声だった。
「え……?」
「違う……違うの……」
「何が、違うの?」
リルルは小さく震えていた。しばらく間があって、やっと口を開く。
「2人とも傷ついたけど……ゼナは家族同士が殺し合うということに、すごくショックを受けてた……。あたしは家族なんていないから、よく分かんないけど……」
「………………」
「あたしは…………自分が怖かった。『力』が……自分を、周りの人たちを、滅ぼしていく姿を見てしまったから……」
震えが大きくなる。
「あたしも……いつかああなってしまうのかもしれない……」
「リルル……」
「また……大切な人を失ってしまうかもしれない……」
この娘は──この13歳の少女の心は、あまりにも傷ついてしまっている。
「ねえ、リルル」
震える肩にそっと手をおき、シモーヌは言った。
「話したくなかったら話さなくていいけど、でも……話したら楽になることだってあるわ。……ね?」
シモーヌを見上げるリルル。その瞳は──深く、悲しい。