先程までの華やかさが嘘のような厳粛な雰囲気の中、アヴァロンは父である王の前に歩み寄った。
GM/王:「連綿と続く我らが大いなる『ヒーメル』の末裔、新たなる後継者たるアヴァロン=ファルバティス=アールマティよ。汝ここに、百の富み、千の恵み、万の知恵を継ぐことを誓うか?」
アヴァロン:「誓います」
GM/大司祭:「では王子、『ヒーメル』の証し、白き翼を我らの前に」
アヴァロン:羽根を出せってこと?
GM:そ。成人した『ヒーメル』は自分の意志で羽根を出し入れできるから。
アヴァロン:なら、大丈夫だな。
ふわぁっと、アヴァロンの背に純白の翼が現れる。
GM:コクリ、とうなずく王。両手の平を合わせるとゆっくりと上に向けて開いていく。そして手の平の上に、半透明の『黄金の林檎』が浮かび上がってくる。
一同:リンゴ!?
GM/王:「さあ……王の証したるこのリンゴを、見事受け取るがよい」
アヴァロン:遠投するの?
GM:ただ渡すだけだよ。
アヴァロン:いや、見事受け取れなんて言うから……。
一歩進み出る王。一歩進み出るアヴァロン。そして『黄金の林檎』が手渡され──
ばちぃぃッ!!!
GM/王:「ぐッ!」
アヴァロン:「うあァッッ!」
よろめく王。弾き飛ばされるアヴァロン。
ざわざわとざわめきが大きくなっていく。
「なんだ今のは……」
「弾かれたぞ……」
「やはりあの噂は本当だったのか……?」
『林檎』に拒絶されたこと──それは儀式の失敗を意味し……
アヴァロンが王の器でないことを証明した瞬間だった──
GM:てなワケで、儀式は失敗に終わった。パーティは中断。王妃(正妻の方)は倒れ、様々な疑念と思惑を生みながら一週間が過ぎた。
アヴァロン:うーん……困ったことになったな……。
サラ:アルバスが、ってのならまだ分かるけど、王子まで外道だったなんて……。
アヴァロン:誰が外道だ。
GM:この一週間で大きく変わったことは2つ。1つは離宮の王妃様が幽閉されたこと。
ゲオルギウス:なぜだ?
ユナ:王子の母親だって噂があったからじゃないですか? 儀式の失敗は彼女のせいってことにされた、とか。
GM:その通り。で、もう1つはソフィアがタナトスの養女になったこと。
一同:はいい!?
オラクル:なんでだべ? ……まさか嫁にでもするつもりか?
GM:えーと、いろいろややこしい事情があるんだけど……しばらく面倒を見ることになったらしい。──てことで、君たちは一緒にいることが多くなった。
サラ:高級娼婦と一緒にいる王女っていったい……。
ソフィア:私、そんな身分のある者じゃないよ?
GM:誰も王女だとか姫だとかは一言も言ってないぞ。
サラ:あれ、そうだっけ? (ニヤリと笑い)なら『いろんなこと』教えても大丈夫だね♪
アヴァロン:やめれ。
ソフィア:そんなことしたら追放ものだよ?
GM:それからアヴァロン、ゲオルギウスとタナトスの必死の説得で、なんとかもう一度『儀式』……というか『試練』を受けさせてもらえることになった。
アヴァロン:ほう。
ゲオルギウス:感謝してくださいよ、王子。
GM:『試練』は3日後。どんなものかはまだ知らされていない。
ソフィア:今度こそガンバろうねー。
そしてあっという間に2日が過ぎ、出発の前の晩になった──
GM:アヴァロンが星でも見ようとテラスに出てみると……彼女がいる。
ソフィア:私?
GM:ううん、違う。クリシュナさんだよ。
ゲオルギウス(ゼナ):クリシュナさん、遊園地来てたっけ?
サラ(サリース):てゆーか彼女を助けにきたんだってば。
GM:そっちじゃなくて、離宮にいた方のクリシュナだからね。
アヴァロン:で、その離宮にいたはずのあなたが何でこんなところに?
GM:さあ、ね。──彼女は 『箱』を持ってて、それを君に渡す。
アヴァロン:「なんです、これ」
クリシュナ:「何も聞かずに、お願いいたします。……くれぐれもお開けにならないように」
ソフィア:開けたら年をとる箱かな?
ゲオルギウス:開けたら私が死ぬりますゆえ。──死ねェェェ!!(箱を開けようとするしぐさ)
アヴァロン:だから、開けるなってば。
GM:ぺこっと頭を下げ、クリシュナは去っていく。
アヴァロン:確かにお預かりいたしました……と。
サラ:あの娘、もっとぽわ〜とした娘じゃなかったっけ?
GM:んじゃ、翌日です。アヴァロンはいつもの面々を連れて試練を受けることになった。
サラ:高級娼婦なんかがついていっていいの?
GM:シーフとしての能力も持ってるから。
サラ:いよいよサリースとそっくりね……。
GM:で、どういう試練かというと……アールマティの南の端にある『女神の塔』を攻略してこい、とのこと。
一同:ほうほう。
GM:で、その前に魔法科学研究所とゆーところでアイテムをいくつか調達していこうということになった。ここは元々ゲオルギウスがいたところで、魔法や遺伝子の研究をしてるんだけど……今はゲオルギウスが宮廷に出ちゃってるから、ヒュプノスという男が代わりに責任者なのだ。
ソフィア:なんかどっかで聞いたことがある名前だね〜。
GM:そこでいくつかマジックアイテムを仕入れ、君たちはさらに南へ向かう。
しばらく行くと、廃村にたどりついた。
GM:ここはネフィリム……巨人の村だったらしい。
オラクル:てことは建物は大きいだか?
GM:いや、そんなことはない。巨人と言っても普段は人と同じサイズだよ。怒ると巨大化するらしいけど。
タナトス:「100年ほど前の話です。王家の人たちが──王子のおじいさまかひいおじいさまにあたる方です──がこの村に視察に来られました。そして些細なことから争いになり……数人のネフィリムが斬り殺されました。仲間意識が強いネフィリムたちは怒り、争いは大きくなり……巨大化したネフィリムと『槍』を持ったヒーメルの軍隊が激突。結果、この村の者は皆殺しにされました……。生き残ったネフィリムはわずか3人だったと聞きます。――……ここは、そういう村なのです」
アヴァロン:「………………」
タナトス:「出過ぎたことですが……王子には、そういうことを知っていていただきたいのです。自分の祖先が、何をしてきたのかを……」
さらに南下し、一行は『女神の塔』にたどり着いた。
ソフィア:『女神の塔』に、とうとう着いた。うふふ。
オラクル:なんちゅーつまらんことを。
GM:塔に着いて……まあ、王子が扉を開けるわな。
アヴァロン:そこで「完」と出る。闘いはこれからだー!!
ソフィア:うわーい、ネバーエンドだァ。
サラ:長い間のご愛読ありがとうございました。
GM:(無視して)塔に入るよー。中はちょっとしたホールになってて、中央に石板がある。『汝の連れを、以下に振り分けよ──生涯の友・結婚相手・恋人・兄弟または姉妹・下僕・遠い親戚』と書いてある。
アヴァロン:なんだ、そのSM○Pみたいなのは。
GM:ん、気にするな!
アヴァロン:まず下僕はオラクルで決まりだろ?
ソフィア:恋人がオラクルってのもいいかも。恋人はオラクルぅ〜♪(歌う)
アヴァロン:これは……選ぶべき相手が悪すぎるな。
GM:プレイヤーを反映しちゃダメだってば。あくまで、キャラクターとして選んでね。
アヴァロン:嫁にするなら、ソフィアだろうな。で、下僕がサラで遠い親戚がオラクル。そうすると女の子はもう残ってないから……結果的にユナが恋人。んで……友にするならタナトス、兄弟にゲオルギウス。
サラ:あたし下僕なのね……。
GM:奥に小部屋がいくつかある。お連れの方は、選ばれた部屋にどうぞ。下僕は下僕の部屋へ。
サラ:はいはい。
アヴァロンを除いた6人が、それぞれ小部屋の中へ。
GM:ではお連れの人たち。『試練』の代わりに、今からちょっとしたゲームをしましょう。
一同:わーい!
GMが取り出したのはトランプ。と言ってもただのトランプではなく、いろんな罰ゲームが書かれた特別なヤツだ。
ソフィア:こんなの、どこから?
GM:なんかのゲームを予約するとついてくるヤツ(いわゆる販促品)らしいよ。バイト先(ゲーム屋)からパクッてきた。
オラクル:お主もなかなかのワルよのう……。
GM:じゃ、『結婚相手』からいこう。(ソフィアに十数枚のカードを渡して)この中から「どうしてもイヤ」っていう罰ゲームを3つ、選んで。
ソフィア:う、分かった。えーとォ……(長考した後)この3枚。
GM:その3枚を除いて、残りのカードをよく切ってそこから1枚引くよろし。
ソフィア:私が引くの!? ……じゃあ、これ。……『モーモーゲーム 今日の君は牛だ。言葉の語尾にモーをつけてしゃべるんだモー』……だって……(笑)。
アヴァロン:……なんちゅーレベルの低い『試練』なんだ……。
GM:次は『恋人』のユナね。(ソフィアが除いた3枚を加えて)どうしてもイヤってカードを2枚除いてから、引くのだ。
ユナ:にゅにゅーん。
オラクル:おらたちは逆にイヤなカードが増えていくだな?
アヴァロン:え? 下僕は全部の罰ゲームをやるんじゃないの?
GM:それはさすがに……(苦笑)。
ユナ:引くよん。……『陳謝陳謝陳謝ゲーム 誠意をもって右隣の人に謝ろう。許してもらえるまでとにかく謝ろう。「ごめん。許して」』だって。右隣って……王子?
サラ:これは……なかなか許してくれそうにないわね。
アヴァロン:何を言う。温厚なオレに向かって。
ユナ:王子……ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
アヴァロン:ん、もういいです(笑)。
ゲオルギウス:アルバスじゃなくてよかったな。