オードー:「確かに、さっきまで何か雰囲気がおかしかっただな」
GM:(それは違うぞ。この遊園地は『アレ』で正しいんだよー)
トパーズ:確かに、ヘンなとこだよね。
GM:もう気づいてると思うけど……この遊園地は『過去』を追体験できるところなのだ。
シェオール:ヒトの過去をえぐりだす、悪趣味な遊園地ってワケだ。
GM:ま、そうだね。
シェオール:認めるなよ……。
GM:(だって……そういう『危険』な場所だからこその『秘境』なワケだし……)
オードー:クリシュナさんはおらたちに過去を見せたかっただか?
シェオール:彼女がこの遊園地を作り出してるワケではないだろ。
ガンバ:いや、きっと彼女の妄想だったんだよ。
GM:(チケットを置いていったのはクリシュナじゃないんだけどな……)んじゃ、次のアトラクションに向かいますか!
過去は全てに優先される。
よって……
そういえば……逃げ出したとき、やたら強い警備兵がひとりいたな……
シェオールはそんなことをぼんやり思い出していた……
「そろそろいいかな」
砂時計の砂が落ち切るのを見て、タナトスはティーポットに手をのばした。
白い湯気と共に、ルビー色のアップルティーがカップに注がれていく。
上品な木製の家具でまとめられた、どこか宮廷を思わせるような部屋だった。
銀の縁取りがしてあるゆったりした黒衣に身を包んだタナトスは、しばし紅茶の香りを楽しんだ後、傍に置いてあったクッキーに手をのばした。
『……ずいぶんと優雅なものだな』
その声に手を止め、タナトスは声の主の方に目をやった。
「ヒュプノス……入るときはノックぐらいしろ」
どこかエキゾチックなかんじのする仮面と、赤と黒を基調にしたマント。声の主――ヒュプノスは鼻で笑い、言った。
『そういうことは、扉を使うヤツに言うもんだ』
「……確かに」
ひょいっと肩をすくめ、タナトスはヒュプノスの分のカップに手をのばし……止めた。
「あ、そうか」
『お茶を味わう楽しみは、ずいぶん前に忘れてしまったよ』
『ヒーメル』の“呪い”により、ヒュプノスの身体は何千年もの間朽ち果て続けている。マントの下は骨と皮しか……いや、皮すらもう、ほとんど残っていないだろう。
『100年ごとに死を迎える“死の王”に、永遠に眠ることを許されぬ“眠りの王”か。……笑えぬ冗談だ』
「せめて生まれ変わるって言ってくれないか? 記憶だけが、だけど」
タナトスは紅茶の入ったカップを手に取り、椅子に腰掛けた。懐かしい、アールマティ製のものだ。造りが丁寧で座り心地がいい。
「それにしても、スゴイものを掘り返したもんだ」
『アポリオンのヤツらが、ずいぶんと力を入れていたからな』
「『アポリオンの亡霊』……ゲオルグって人のことだな」
『アイツは随分とよくやってくれている。手を組んで正解だったよ』
「さーてね、どっちが利用されているのやら」
タナトスの言葉に、ヒュプノスがくぐもった笑い声を上げる。
『どちらでも構わんさ』
「『大いなる遺産』……か。その先に待っているのは、希望なのか絶望なのか」
ゲオルグは『大いなる遺産』を手に入れようとしている。いや、既にひとつは手中に収めている。だが彼はさらに求めつづけるだろう。全ての、『遺産』を。
『その先に何を望む……。百万の富か、世界の王か、はたまた永遠の命か……』
望み……それは欲望という名のものしかないのか。
『それで……どうなのだ?』
「ゲオルグとクリシュナがアドラメルクの『クーア』を探しにいっている。“コイツ”がアドラメルクに着く頃には回収してるだろう」
クリシュナは、エスペルプレーナで特に抵抗することなくタナトスについてきた。“同じ”であることが判るのか、あるいは……
(あの頃とは、随分変わってしまっていたしな……。まるで心がないようだった)
そんなことを思いつつ紅茶を一口飲み、彼は言葉を続けた。
「『ソフィア』の方は……間隔が短くなってきている。封印も弱くなってるし、そろそろ限界だな」
カップをテーブルに置き、窓の方に歩み寄る。
「我らが『主』は……お目覚めの時間のようだ。近くにいるだけでその『力』を感じ取れる。迎えにいって、いいと思うよ」
その言葉に、ヒュプノスは目を細めた……ように見えた。
『そうか……いよいよ、だな』
「ああ……『時』は近いようだ」
タナトスは窓の外に目をやった。眼下には、白い雲の平原がどこまでも続いている……
GM:今まで黙ってたけど、この遊園地には観覧車があります。
トパーズ:「わーい、いこういこう!」
リューセ:「やっぱ観覧車はふたりずつで乗らないとねー」
ガンバ:「え、全員で乗るんじゃないの?」
シェオール:あのな……。物置のCMじゃないんだから。
GM:では、大観覧車『オーバータイム』に到着。
オードー:クリシュナさんがいねェか探してみるだ。
GM:『心』で判定してみて。一生懸命探すなら修正はナシでいいや。
アルバス:一生懸命探さないヒトの修正は?
リューセ:アルバスぅ……。
アルバス:(コロコロ)あ、ファンブル。
オードー:(コロコロ)クリティカルで成功してるだ。
GM:じゃあオードーが一番最初に見つけたワケだ。――上っていってるゴンドラの上に、人影が見える。
トパーズ:……ひょっとして『天知る地知る』の正義のマント男?
GM:それはないなァ……。メガネをかけたおじさんだよ。
ゼナ:なんだ、湯川元専務か。
ゼナパパことゲオルグだってば。
一同:誰だ誰だ!
ゼナ:……誰?(笑)
GM:ゼナパパの横にはクリシュナがいる。
アルバス:またこのパターンか。
ゼナ:ニセモノの『クーア』を見せて――
ガンバ:高笑いしながら去っていくんだね。
ゼナ:なんか、リアクションは?
GM:今のとこ、特に。
シェオール:(ゲオルグを見て、奥歯をギリッと噛む)
ガンバ:さ、ゴンドラに乗って追いかけるだわさッ!
アルバス:追いつけない追いつけない。
ゴゥン…… ゴゥン……
頂上に向かって上っていくゴンドラ。
ゴゥン…… ゴゥン……
ゴンドラが頂点に達したとき――
ゴゥン…… ゴゥン……
ゲオルグ:「来たか……『メルカバー』……」
ゴゥン…… ゴゥン……
雲間から、巨大な空中要塞が姿を現した。
シェオール:空中要塞って……南キャンバス大陸には、空を飛ぶモノは存在しないんじゃなかったのか?
オードー:それより『メルカバー』って聞いたことあるだ!
ユナ:ヴィゾフニルの資料にありましたよ。“その昔、大いなる「天人」の末裔は、空に舞い、雷と嵐を呼ぶ「雲」を創造した。その名を『火の車』という"
GM:『神の戦車』! ――んで、『メルカバー』からミュワワワワワワ〜とわっかのレーザーがゲオルグに発射され、ゲオルグとクリシュナはふわわ〜と上っていく。
ゼナ:おやくそくだね。
シェオール:ライトセイバーでも撃ち出すか? だがしかし――
アルバス:オレが魔法を撃とう。
GM:クリシュナに当たるかもよ?
アルバス:それもまた一興だろう。
リューセ:さすがアルバス……強い……。
シェオール:ここで引いてしまうあたりが、俺の限界なんだろうな……(苦笑)。
GM:さすがに魔法は届かないよ。――んで、ゲオルグを収容した『メルカバー』は砲門を開くと、君たちじゃなくてエスペルプレーナに向かって攻撃を開始する。
一同:うをををゥ!!?