その頂上、世界を分かつ『障壁』の前に、3つの人影があった。
トパーズ、マフィ、そして……シェオール。
マフィ:「この壁を越えたら、北キャンバスに帰れるんですのね……」
トパーズ&シェオール:「「………………」」
マフィ:「おふたりとも、どうかしましたの?」
トパーズ:「いや、ちょっとめまいがね……」
シェオール:「お前の本性はバレてるんだ。無理して上品ぶるな」
マフィ:「まあ! ヒドイですわ、ふたりとも……。……なーんてね。アッハッハッ!」
シェオール:(ぼそっと)「8歳も24歳も変わらないよな……」
マフィ:「アルバスがああなったの、実はわたしが原因だしねー……」
トパーズ&シェオール:「「……まぢ?」」
ニタニタ笑うだけで、マフィはそれ以上答えない。
マフィ:「それより、早く『障壁』越えちゃお。……今度は失敗しないでよね」
トパーズ:「ダーイジョウブだってば。あたし、ガンバるし」
とは言ったものの、ここぞというところで失敗する癖(?)は未だに直っていない。
シェオールはそっと神に祈り……今、この大陸を見守っているのが“あの”女神であることを思い出した。
ここにもまた、悩みの種がひとつ。
彼は深くため息をついた。
マフィ:「それじゃ、いくよー!」
マフィの姿が、金色の大剣に変わる。
帰ろう。家族のところへ。
伝えよう。ラズリのことを。彼女が……やさしく微笑んでくれたことを。
そしてまた……旅に出るんだ。
トパーズは、『十六夜』を振り下ろした。
新たなる『扉』を開くために。
それが『メファシエル』──『扉の天使』の力だから……
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抜けるような青空は、まさに旅立ちにぴったりと言えた。
イシュタルの外れの広野。
エスペルプレーナ2に次々と荷物が積み込まれていくのを、ゼナはぼんやりと眺めていた。
その横には、リルルとゼナツー、それからゲオルグの姿もある。
リルル:「みんな、遅いね……」
ゼナ:「うん……」
リルル:「サリースさん……いなくなったんだってね……」
ゼナ:「うん……」
リルル:「トパーズさんたちも、旅立ったんだって……」
ゼナ:「うん……」
生返事ばかり。『船』を見ながら、今までのことを思い出したりしてるんだろうか。
リルル:「ゼナも……行きたいんじゃないの?」
ゼナ:「いや……ボクはいいんだ──今はね」
と──遠くから走ってくる車と、それに併走しているゴーヴァの姿が見えた。
ゼナ:「あ、来たみたいだよ」
車にはフレイヴスとニーヴェが乗っている。運転しているのはG−X。たぶんカーもどこかにいるはずだ。それに、オードー・レオ・アン・リディ、それから……今回の主役である、エノク=レイズブルーク。
ゼナ:「みんなに会うの、あのとき以来だね……」
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『光』が消えていく。
波が引いていくように、混乱が収まっていく。
アルバス:「リューセ……やったのか……?」
その場に座り込み……アルバスは夜明けを待った。
世界中の人がじっと、夜明けを待っていた。
“最後の楽園”ニャルラトホテプ──
リューセは意外と平気そうだった。『力』のコントロールも、うまくいってるようだ。
疲れきった表情で……皆が集っていた。
これからのことを決めるために。
ゼナは……リルルと生きていくと決めていた。
できれば、ゲオルグやゼナツーやシェオールとも。
ゴーヴァ:『おれは……コイジィ・ニールに残る』
ゼナ:「え……そうなの?」
ゴーヴァ:『ゼナと一緒にいるのも楽しいが……ジャマしたら悪いしな』
ゼナ:「ゴウ……」
G−X:「私も、コイジィ・ニールに残りたい。北キャンバス大陸にこだわる理由もないし……Gシリーズを追う必要も、もうないしな」
トパーズ:「あたし、北キャンバスに帰ります。……マフィはどうする? あなたはもう大人だから……自分で決めていいよ」
マフィ:「わたしだって、北に帰りたい。……でも、道が分からないんですの」
トパーズ:「……ですの?」
マフィ:「だからもうしばらくよろしくね、トパーズ“おねーちゃん”」
トパーズ:「……うん!」
シェオール:「俺は……」
トパーズ:「シェオールは、あたしたちと一緒に北キャンバスにいくんだよ」
シェオール:「…………はァ?」
トパーズ:「その腐った根性叩き直してあげるわ。向こうには楽しい人たちが……ホントに楽しい人たちがいっぱいいるんだから」
シェオール:「いや、ちょっと待て、俺は……」
トパーズ:「はい決まり〜! もう決まり〜! だーいけってーい!」
シェオール:「………………。……まあ、それもいいかもしれんな」
ユナ:「にゅ……わたしは……タナトスと一緒にいようと思う。解ったんだ、いろいろ。『タナトス』であり『アヴァロン』だった彼と……一緒にいる。それが『願い』だったから」
ガンバ:「クルック〜♪」
『ガンバ』であり『ビッケ』であり全てのクックルックルーフの『集合体』となったガンバは、意味深な笑顔で一声鳴いた。
今までもクックルックルーフは『個にして全の存在』だったら、あまり違和感はない。
フレイヴス:「我々は……コイジィ・ニールの復興だな」
ニーヴェ:「ええ……そうね……」
ニーヴェはそっと愛する人に寄り添った。久しぶりに会えて……うれしい。
サリースは、ずっと黙っていた。何か……考え込んでいるようだった。
ゼナ:「アルバスさんは?」
アルバス:「秘密だ」(即答)
ゼナ:「……リューセさんは?」
リューセ:「秘密です〜」
サリース:「アンタらは……」
リューセ:(ひそひそ)「アルバス、後で私には教えてね……」
アルバス:(ひそひそ)「ま、考えておいてやる」
と……ここで、エノクが咳払いした。皆の視線が彼に集まる。
エノク:「実は……皆さんに重大な発表があります」
ゼナ:「……何ですか?」
エノク:「私…………宇宙へいこうと思うんです」
一同:「…………はいィ〜?」
エノク:「8000年前、『ヒーメル』は11隻の『船』でこの星にたどり着いた異邦人<ストレンジャー>でした」
サリース:「『ヒーメル』は……宇宙人だったってこと……?」
エノク:「だから……いってみようと思うんです、故郷の星へ」
そう言ったエノクの背に……白い翼が現れた。


