OP.3[夜毎、神話がたどりつくところ]-a tale for you- 09

 <星守の地>──

GM:エスペルプレーナは、ゆっくりとその中心に降り立った。ドーム状の『結界』の中だね。その外は氷に覆われた世界だ。

レイチェル:<ウロボロス・システム>を運ぼう。──私は、ここが懐かしいと感じるんだろうか。

GM:そうだね。かつて、ここにいたという記憶がある。<螺旋の門>は、地下にあるよ。

リトナ:じゃあサンチェルが台車に変形して。

GM:ん?

リトナ:サンチェルは、サンダユウなんでしょ?

GM:ちゃうわい(笑)。

アリア:キュアは?

GM:かろうじて、首から上だけ。

アリア:………………。きゅっと抱きしめるようにして、あたしが運ぶ。
 

 星の中心と呼ばれるその場所は、何もかもが白で覆われていた。天井も、床も。

 遠近感を失った空間の中心に、ぽつりと、黒いドーナツ状のヘコミがある。
 

レイチェル:「ここだ」
 

 <ウロボロス・システム>をはめ込む。幾筋もの光が縦横無尽に走り、円環はまるで最初からそこにあったようにすっぽりとその場所に収まった。
 

GM:レイチェルたち6人は、<門>を中心に均等な位置に立つのだ。ちょうど、六芒星の頂点に立つように。

レイチェル:分かった。
 

 円環の中心に、首だけになったキュアを置く。

 額にかかった髪をかき上げ、ぽっかりと空いたその空洞が見えるようにする。

 両手で下向きに構えた<鍵>の先が、微かに震えている。
 

 ……これでアルカディアを救うことができる。

 ……これでキュアとはお別れだ。
 

アリア:「お別れを言うこともできなかったね」
 

 ──さよなら。
 

 アリアは<ヴリトラの剣>を突き刺し──鍵をかけた。

 世界の閉じる音がした。

 虹色の光が螺旋を描き舞い上がる。

 レイチェルは自分の中で何かのスイッチが入ったことを認識した。
 

 ……飛ぶのだ。
 

 『何か』が命じる。背中の皮膚が破れ、翼のような『何か』が生まれる。

 今、<門>は閉じられた。

 世界が変わる。巨大なそのシステムが、ことごとく形を変えていく。

 世界をつくりあげるその力の名は……<螺旋力>という。

 ……………………。

 アリアは、ゆっくりと目を開けた。
 

 ……どうなったんだろう。
 

 目の前が白い。まだ、<螺旋の門>にいるのだろうか。

 顔を上げる。ゆっくりと、軋む首を巡らせる。

 白い地面と、黒い空。……外?

 地面はさらさらとしたもので覆われている。……砂? ……塩?

 黒い空。……雲?
 

 ……どこだろう、ここは。
 

GM:気がつくと、君は塩の砂漠の真ん中にいる。

アリア:みんなは?

GM:誰もいない。ミケだけだ。

アリア:ミケを抱き上げる。よかったねーミケ。無事だったんだ。

GM:怪我をしているらしく、ミケはぐったりしてる。

アリア:応急処置をして……ちょっと浮いて、周りを見渡そう。何か見える?

GM:何も。どこまでも白くかすむ地平線が広がっている。

アリア:ふよふよ飛んでいく。……うん、雲の流れて行く方にでも。

 飛ぶことにも疲れて、それでも歩いて、それも疲れて、足の感覚がなくなってきていた。

 歩いても歩いても世界はその姿を変えない。

 どこまでも続く白い塩の砂漠。雲の流れさえ見分けることができないほどの黒い空。

 いったいどれくらい歩いたのだろう。

 少しずつ失われていくミケの体温だけが、時間の流れを教えてくれる。
 

アリア:「遠いねえ……。疲れたねえ。………………。……ミケ、死ぬのかな……。あたし……死ぬのかな……」
 

 応えるものは何もない。風の音すら、ない。

 何もない世界。
 

アリア:「ミケ……ごめんね……。みんな……ごめんね……。……ごめんなさい……」
 

 そのとき。

 雲間に、赤い光が生じた。ひとつ。またひとつ。光は増えていく。

 赤い光は、まるで蟲の羽のように見えた。

 無数の赤い羽。雲の間から降りてくる、巨大な物体。
 

アリア:(見たことあるような気がする……。気のせいかな……。お迎えがきたのかな……)
 

 死ぬんだ。この星も。あたしも。
 

アリア:「今まで傷つけてきた人、ごめんね。……なんだか……疲れちゃった……」
 

 そこで、アリアの意識は途絶えた。



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