ボルサオは……語り始める。
ボルサオ:「この星の、古い姿を知っていますか?」
アリア:「知ってる。昨日、見たばっかり」
ボルサオ:「この星には遠い昔、イエスという者がいました。彼はワインとパンを血と肉に例えたそうです」
リトナ:「聞いたことがあるよ」
ボルサオ:「今回は、その逆をしてみようと思いました。我々の血肉を持って、それをワインとパンと成す──」
キュア:「なるほど……。あの<プラント>の食料がそうだってワケね」
アリア:「それで──それが何だって言うのッ?」
ボルサオ:「アナタたちも……その<ワインとパン>を口にしましたか?」
アリア:「し……知らないもんッ!」
ビオ:「てめー、ブッ殺す!!!」
リトナ:「まあまあビオさん、今はアイツの話を聞こう」
ボルサオ:「今……ここへ、アルカディア中の人々が集まってきています。国も、戦争も関係なく。彼らは<パンとワイン>を口にしたものたちです。……私が、広めました。あるときは支援物資として、またあるときは軍事物資として、ね」
アリア:ぶーぶー!(←御不満らしい)
ボルサオ:「『集え諸人よ。遥か西にある<楽園>を求め、共に旅立たん』──私の呼びかけに彼らは答え、この<太極樹>を目指しています」
アリア:ちょっと待って、それじゃあたしが西を目指したのも、コイツの呼びかけがあったから……?
リトナ:その可能性は否定できないね。
アリア:分からなくなってきた……。どこからどこまでが仕組まれたことなの……?
GM:そうこうしてるうちに……第一陣が、<太極樹>を目指す人たちの姿が見えてくる。続々と、黙々と歩いてくる。
アリア:「なに……? 何がしたいの……?」
ボルサオ:「私はね──<神>が見たいのですよ」

ボルサオ:「では逆に問いましょう。アナタは、<神>を見たことがありますか?」
アリア:「知らないよッ、そんなのッ」
リトナ:あのね、それを語りだすと長くなるんだよね。
君が言ってるのは三大のうちの2番目の神様。
1番目はイスラム教っていうのがあって、これが教えているのは、人間に神とはどういうものか分かりやすく示すために、そこらへんにいる人が自らの力で神になるブッダの形を示した。
でもそれじゃ人々はついてこなかった。
だから、その後に2番目の──イエスだね──神が選んだ子として彼は地上に送られ、教えを広めようとした。でもダメだった。
だから3番目に、自らの姿を現した神がいるんだよ。──君が言ってるのは、どの神のことかな?
ビオ:長ぇよ、話が。──小難しいことは分からねえが、俺がヤツを倒すー!
ゴルディッシモ:まあ、アレだね──モヤシには108の神様が宿っていると。
アリア:あー……コイツらは無視していいから。──で。……どうして、神が見たいの?
ボルサオ:「私はこれまで自らのあらゆる欲望を叶え、そして他人の欲望をも叶えてきた。ただひとつ……──<神>を、見たことがない」
アリア:「そんなことのために……? アナタはただそれだけのためにこんなことを……」
ボルサオ:「それだけのこと……ですか」
アリア:「それだけの……ことだよ」
キュア:「何かを知りたいという、知的好奇心……」
アリア:神が見たいってだけで……自分の勝手な都合だけで……こんなことをしてるんですか。──神を見たらそこで終わるんか。それで満足するんけぇ?(←んまあ、ガラの悪い)
ボルサオ:「私は──知りたいのです」
リトナ:死にたいなら勝手に死ねばいい。
ビオ:死ねば神に会えるかもしれないぜー?
キュア:「死にたい」じゃなくて、「知りたい」だってば。
ヴァンダイク:なぬ、「尻たい」とな。
キュア:それも違う(笑)。
ボルサオ:「かつてこの星には、確かに<神>がいたのです」
リトナ:それは難しいとこだね。
神を書物に求めるか遺跡に求めるかで変わってくるから。書物に求めるなら、確かに神はいた。
でも、遺跡に求めるなら神はいない。
それを端的に示す国として……昔、日本という国があったのね。この国では天皇を神としていた。
天皇ていうのは何かというと、その国で一番最初に力を持った人たちなんだよね。
──結局呼び名のひとつなんだよ、「神」っていうのは。
ビオ:長ぇよ、話が。
リトナ:神ってそんなもんだよ? ……そんなの、見たい?
ボルサオ:それはきっと、真なる<神>ではないのでしょう。
アリア:そんなことはどうでもいいんだ。……ホントに、神なんてあたしたちにとってはどうでもいいことなんだよ。
ビオ:だからテメエひとりで死んで、地獄で神に会うんだな! ……ま、地獄に神はいねえが。
リトナ:でも、地獄に仏はいるよね?
キュア:それ、意味が違う……。
ボルサオ:「アナタたちがどう考え、どう信じようが真実は変わらない。かつて、<神>がいたという真実。そして今はいないという事実。……<神>はどこへいってしまったのか。我々は見捨てられてしまったのか……」
アリア:「……だから、なに」
リトナ:まあ、唯一絶対の神がいるとしたら、それは『地球』というものの意志なんじゃないかな。
キュア:ガイア理論だね。
アリア:「アナタは……神を呼び出して、それで世界を救ってもらおうとでも思ってるワケ?」
リトナ:「神を見て終わりなら、人を集める意味がないよね」
ボルサオ:「<神>を目にし、<神>に触れ、<神>を知る……。自らの望みや考えなど、無意味です。<神>の先に過去も未来も関係ない。全ては<神>に始まり、全ては<神>に終わる。全ては分解・離散し、だがそれでも変化するものなど何もない。……<神>がもたらす、想像もできない『何か』──ただ、それを静かに待てばいい」
リトナ:さっぱり意味が分かりません。
ボルサオを目を細め、わずかに間をおいた。そして、再び口を開く。
ボルサオ:「私は考えました──どうすれば、<神>が再びこの世界に降臨するのかを」
アリア:「へえ?」
ボルサオ:「そして……ある、ひとつの『答え』にたどり着いたのです」

突然の激痛に、ビオは顔をしかめた。
左胸に痛みが走る。脈打ちながら、『何か』が鎧を押し上げようと圧迫する。
ビオ:「なんッ、だあ……? こんなときによぉ!」
ズクン…… ズクン…… ズクン…… ズクン……
鎧の止め具を引きちぎり、上着を破く。
左胸の上に浮かび上がった小さな肉塊。
根を張るように細い管が絡みつき、規則正しく脈打つ。
明らかな異物。
感じられるのは流れと温もり。激しい痛み。
鼓動する小さな肉塊──人はそれを、『心臓』と呼ぶ。

GM:ビオは突然の痛みに苦しみ、君たちの後ろには続々とメーヴェが集い始めている。
リトナ:(後ろを振り返って)うひゃー、これはなかなか圧巻だなぁ。
アリア:その人たちは……正気なの?
GM:んー……正気ではないけど、操られてるというワケでもないね。ある者は虚ろな表情で、ある者は恍惚としており、ある者は笑い、ある者は脅え、ある者は叫んでいる。
キュア:……それって全然正気じゃないような……。
GM:じゃあ丁度いいから、メーヴェたちの方を見てるリトナ、視覚判定してみて。
リトナ:(コロコロ)成功している。
押し寄せる人波の間から……赤い飛沫が上がるのが見えた。
リトナ:「あれって……」
キュア:『ラーヴ』……? でも、ここにいるのはメーヴェなんでしょ……?
GM:また違うところで、赤い飛沫が上がる。それは、少しずつ広がっていってるようだ。
リトナ:「ビオさん、あれ! 後ろ後ろ!」
ビオ:(振り返って)「……今度は何だってんだ……?」
ボルサオ:「何って……『ラーヴ』ですよ」
アリア:「なんで……『ラーヴ』が……」
リトナ:「メーヴェの身体に戻ってきたんだよ」
ボルサオ:「その通り。その猫の言っていることは正しい」
リトナ:ぬを?! ……口からでまかせだったのに。
ゴルディッシモ:瓢箪から駒というヤツだ。
キュア:つまり……『メーヴェ』と『オゥリン』は元は同じ存在だった……?
GM:そう……考えてもいいのかな。血と肉──それとボルサオが仕込んだプラスアルファ──を口にしたことによる一種の『先祖返り』、身体構造の急激な変化が起こったのだね。それによってメーヴェは『ラーヴ』を持つ肉体へと変化した。
リトナ:そして、魔族が人間に還れば、神が戻ってくるってことでしょ?
キュア:メーヴェの血肉をパンとワインとして、捧げるってこと……?
GM:それは……ちょっと違う解釈だな。
それはあるいは、遠い昔の姿を求めての行為だったのかもしれない。
集ったメーヴェたちは『血』を浴び、興奮し、
斬り裂き、
口にし、
狂い、
自らも他人も傷つけ、
すすり、
狂喜する。
泣き叫ぶ。
赤い雨。
血の雨の中での、宴。
アリア:「赤い──雨──」
GM:血の雨が、君たちの方にも降り注ぐ。
アリア:「うわー、うわー、うわー!」
ヴァンダイク:「わーいわーいわーい!」
アリア:喜ぶな、そこッ!
ボルサオ:「我らが<神>の子であるとすれば──<神>は母だ」
アリア:「だからなに! こんな……こんなことをしていいと思ってるの!」
もう……男も女も、幼子も老人も関係なかった。
呼びかけに答えたものたち。
助かりたい、生きながらえたいと望み、遥か西を目指してきたものたちが、傷つけ合い、殺し合い、命を散らしていく。
ボルサオは言う。これが本性なのだと。
ボルサオは叫ぶ。
ボルサオ:「<神>よ! ああ、私たちはこんなにも愚かです! 愚かなる私たちに、どうかそのお姿をお見せください!」
そう、叫ぶのだ。


