MOND REPLAYV外伝:05

・4000年前 空中都市アールマティ 王都郊外

 もう何人殺してきただろう……

 騎士も、兵士も、男も、女も、子供も。

 あらゆる『ヒーメル』の首を刈り、胴をなぎ、腹を刺し貫いた。

 もう止まらない……止められない……
 

 ヒュウ……今ならお前の気持ち、少しは解る気がする……
 

 国中を、『疫風』が吹き荒れていた。

 “崩れた”同族を踏みつけながら、たくさんの『翼あるもの』たちが俺を襲った。

 命を延ばすために……生きるために……わずかな希望を信じて……

 『ネフィリムの首を差し出した者には、特別な延命処置を』──そんな言葉を信じて……

 刃物を手にした女や子供が、何人も、何人も、俺に切りかかってきた。
 

 女たちは、ただ、自分の子供を救いたかっただけなんだ。

 子供たちは、『C.L.R』に融合してもらえなかったかわいそうなヤツらなんだ。

 もう……もう……
 
 

  ……死んでしまえ。

 (回想)空中都市アールマティ 魔法科学研究所

タナトス:「ゲオルギウス……宰相やめるって、ホントか?」

ゲオルギウス:「ああ、本当だよ、タナトス。……この国は、どうやら私を必要としてないようだからね……」

タナトス:「そんなの……ダイモンのじじいのタワゴトだろ……?」

ゲオルギウス:「あは……あははははは……」

タナトス:「どうした?」

ゲオルギウス:「いやなに、ちょっとした思い出し笑いさ……。この間、どこぞの貴族のババアが見合い話を持ってきてな、『ゲオルギウス様、お似合いだと思いますよ』とか言うんだ。──……結婚したって、子供なんかできやしねえよ……」

タナトス:「ゲオルギウス……」

ゲオルギウス:「タナトス、私もどうやら『ヒーメル』を許すことができそうにないよ。あはははははは……!」

タナトス:「………………」

ゲオルギウス:「なあタナトス、永遠の命ってどんなかんじだ? 教えろよ。刺されても死なないのか? なあ? 教えろよ」

タナトス:「お前……どうしちまったんだよ……」

ゲオルギウス:「あははははは……! ……生きてやる……」
 

 俺は……語り継ぐ……俺の想いを……永遠に……

 いつの間にか……腹に大振りのナイフが突き刺さっていた。
 

タナトス:「誰だよこれ……。結構……深手なんじゃないかァ……これ……」
 

 意識が朦朧とする。
 

 ここ、どこだ……?
 

 見覚えのない場所。……いや、ある、気もする。
 

 あ……ここ、『女神の塔』のどこかだな……
 

 いつの間に塔にたどりつき、どうやってここまで登ってきたのか……。

 なぜ、ここに来たのか……。
 

 傍に……少しでも傍にいたかったんだ……

 俺は……ソフィアの騎士だから……
 

 混濁する意識。あいまいな心理。

 深い『海』の底へ、タナトスは落ちていく──

・テーレ1136 “最後の楽園”ニャルラトホテプ 『女神の塔』最下層(最上階)

 アルゴスが消えた後も、タナトスはしばらく放心したようにたたずんでいた。

 やがてのろのろと手をのばし、台座にはめ込まれた『箱』を手にした。
 

 『パンドラの匣』……

 覚えてる……

 アヴァロン王子の『黄金の林檎』の中の記憶

 それははるか遠く……──はるか故郷の、物語──

・1万年前 惑星EDEN

 そこは、緑に包まれた楽園だった。

 遠い遠い、女神が統治する星――EDEN。

 女神と、ヒーメルと、ネフィリムが共に暮らす場所。

 ヒーメルは、女神とともに。ネフィリムは、ヒーメルとともに。
 

 しかし……平和は長くは続かなかった。
 

 ヒーメルによる女神殺し。

 ネフィリムの暴走。

 楽園の崩壊……
 

 衛星軌道上の11隻の『船』は、故郷を捨て、新たな星を求める旅に出た。
 

 その中に、パンドラという名の少女がいた。

 オファニエルに仕えていた、ヒーメルの神官だ。

 彼女の手の中には、『箱』があった。
 
 

オファニエル:「これを……お願いね……」
 
 

 オファニエルから託された『箱』

 その中には、『再生』と『消滅』、2つの力の結晶体が入っている。
 

パンドラ:「オファニエル様……」
 

 パンドラは知らない。彼女の『体内』に、『女神の心臓』が眠っていることを。
 

 『船』は進む。パンドラという名の少女を乗せて。

 『黄金の林檎』──それは『想い出』を運ぶもの

 アヴァロンが受け取り、アルバスに引き継がれ……

 リューセの手に渡り、また、アルバスの元へ帰ってきた。

 『全ての知恵』を内包する禁断の果実。

 連綿と続く『ヒーメル』の歴史を内包する黄金の果実。
 

「こいつがただの『知恵の実』なら捨ててしまってもよかったんだが……御先祖様の『想い出』を捨てるワケには、いかないからな。……これに自分の家族の『記憶』が刻まれるならなおさらだ」
 

 昔、フレイヴスはそう言って笑った。
 

 アルバス……君はこの『林檎』をどうするんだろう……?

 心配はしてないけど……楽しみだよ

 時が過ぎて君が大人になって……そのとき、その横にはリューセがいるんだろうか……

 リューセ……君はどう思う?

 リューセ──僕の大事な『娘』



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