……………。
──『扉』が開く少し前のことだった──アメシストが婚約したのは。相手はもちろん君のお父さんで──婿養子になったのかな、
どういう経緯があったのかは知らないけど。とにかくマラカイトは彼女にベタ惚れで、彼女も……彼を愛していた。
間違いなくね。──ところで、ヴァルト=ラィヒ族の、と言うより『鍵』の家系の結婚の仕方を知ってるかい?
ううん、知らない。
──『雪の神子』様の許しをもらって、いつ式を上げたらいいか決めてもらうんだ。未来を「見て」もらってね。
それで、ふたりの結婚式は3ヶ月後に決まった。
……1ヶ月後に、『扉』が開くことが分かっていたから。
『扉』が開く前に結婚したらいけないの?
──『鍵』の巫女の処女性が、『儀式』には重要らしい──誰が決めたのか知らないけどね。
フーシェ様(先代の『雪の神子』)の力で『扉』がもうすぐ開くって分かっていたから、アメシストは汚れのない身体でなければならなかった。
でも……『儀式』のとき、アメシストは妊娠していた。
それが……あたしとオニキスなのね?
──マラカイトは僕とアメシストの仲を疑っていたんだ。それで、不安だったんだろうね。僕は殺され、『祭器』となった。
君が持ってる形見のイヤリング、あれだよ。
そして……マラカイトはアメシストを抱いたんだ。──これが第1の罪。
まだ……あるの……?
──『儀式』は難航した。罪の意識からかアメシストの祈りは乱れ、『魔界』の化け物が『扉』をくぐることを阻止できなかったんだ。
この化け物を人間界に入れるわけにはいかない、誰もがそう思った。そこで……土地神たちはある決断をした。
『狂える竜』を解き放ったんだ。
狂える竜?
──心が壊れた哀れな【竜】の土地神だ。『彼女』は非常に高い戦闘能力を持っていたが、【竜】の一族にとっては汚点だった。
そこで、化け物と戦わせ、『彼女』に名誉の死を与え……消そうとしたんだ。
『彼女』は精神をコントロールされ、無理やり戦わされた。
ひどい……。
──これが第2の罪。でもね、皮肉なことに『彼女』はその化け物と融合してしまった……。
君たちが『魔獣』と呼んでいたものに、その姿を変えたんだ。
じゃあガルフが……あたしたちが倒したのは──
──『狂える竜』──ヴィーと名付けられた子供の、母親だ……。
そんな……。
──『儀式』は失敗に終わった。何とか『魔獣』を封じ込め、『扉』を閉じることができたのは奇跡としか言いようがないだろう……。
だが……『紫の中空』は、癒されてはいなかった。そして、様々な歪みが生じたんだ。
オニキスが『魔界』の力を帯びていたのもそのひとつ……。
これが……25年前の過ち……。
──憎しみとかなしみはまだ消えていない。だから君たちは『生け贄』として──
オニキス:「ラズリ! ラズリ!」
ラズリ:「あ……?」
オニキス:「なにぼーっとしてんだよ。しっかりしろよ」
ラズリ:「ここは……」
GM:君とオニキスはゆっくりと落ちていっている。淡い輝きを放つ、空間の中を。
ラズリ:そっか。『紫の中空』だったね、ここ……。ねえGM、あたし、姉さんの手、しっかり握ってるからね。絶対、離さないからね。
GM:(にっこり笑って) 分かったよ。ふたり、手をつなぎながら落ちていく。深く、深く、深く──
ラズリ:「姉さん……。あたし、いろんな話を聞いたよ、あの人に」
オニキス:「そうか……」
ラズリ:「いろんなことが、あったんだね……」
オニキス:「そうだな……」
ラズリ:「たくさんの人が、傷ついてたんだね……」
オニキス:「そうだな……」
ラズリ:「あたしね……」
GM:そのとき、オニキスだけ落下速度が遅くなる。少しずつラズリとの距離が開いていくよ。
ラズリ:手、離さないからね!
GM:(首を横に振って)少しずつ距離が離れていく。手も──離れてしまう。
ラズリ:「そんな! 姉さん! 姉さん!」
オニキス:(にっと笑って)「バーカ、泣くんじゃねーよ」
ラズリ:「姉さん! ひとりは……ひとりぼっちはイヤだよぉ!」
GM:君たちは『紫の中空』にいる。んで、少しずつ落下している。まるで水の底に沈んでいくようにね。
ガルフ:「ここが『紫の中空』か……」
オペリオ:♪たちってことは──やっぱおれもいるの? しかも全裸で(笑)♪
一同:うわぁ、イヤすぎるぅ(笑)。
オペリオ:♪はっ! 昔見た、全裸で暗闇を落ちていくビジョンはこれだったのか!♪
GM:(ぽんと手を叩いて) さすがオレ。一分のスキもない伏線(笑)。
ガルフ:ウソつけ。
GM:うん、実はただのウケ狙いだったの、あれ(笑)。
ガルフ:しかし大丈夫なのか? 一般人がこんなとこに来て。
オペリオ:♪だーいじょうぶ! なんてったってオペラ時空の使い手だから♪
GM:で、だんだんふたりの落下速度に差が出てくる。ガルフの方がオペリオより早く落ちていく。
オペリオ:♪ガルフぅ!(手を伸ばす)♪
ガルフ:オレは手を伸ばさない(笑)。また会おう、オペリオ!
オペリオ:♪ひどいやひどいやひどいや〜(笑)♪
GM:オペリオとはぐれ(笑)さらに落ちていくガルフ。そしてそれを待ち構えているのは──
ガルフ:「お前、か……」
ガルフ:「こんなところで何をしている? ラズリを探しているのか? それとも──」
ラグランジェ:「あなたを殺すために──ここで待っていました」
ガルフ:「やはりそういうこと、か……。(フッと笑って) そこをどけ。オレにはやることがある」
ラグランジェ:「見殺しにするんですか──ラズリさんを」
ガルフ:「ああ……。オレはラズリを救いに来たんじゃない。世界を救いに来たんだ」
一同:な、なにぃ!?
ラグランジェ:「このままでは、ラズリさんは『生け贄』として『紫の中空』に捕らわれ続けることになる──永遠に。
永遠の束縛──そんなことは、絶対にさせない……」
ガルフ:「だが『儀式』を中断すれば、『扉』が完全に開いてしまう。──どういうことか分かるか?」
ラグランジェ:「世界の、融合……」
ガルフ:「そう……いわゆる『人間界』と『魔界』がひとつになるんだ。
だがひとつの場所にふたつのものは同時に存在することはできない。時間と空間は崩壊し──世界は消滅する」
ラグランジェ:「だから、彼女を犠牲にするんですか? あなたは……ラズリさんを愛してたんじゃなかったんですか?」
ガルフ:「…………。──世界を救うことが、オレの任務だ」
ラグランジェ:「世界なんかどうでもいい。ラズリさんが救われるなら……それでいいじゃないですか」
ガルフ:「世界が滅びればどのみちおしまいだ」
ラグランジェ:「ラズリさんが全てなんだ……。ラズリさんを守ることがボクが全てなんだ!」
ガルフ:「どうやら貴様とは話すだけ無駄のようだな。邪魔をするなら──容赦はしない!」
……ラズリ……。見えなくなっちまったな……。……ん?
……お、お前は……。
──初めまして、というのも変ね……。会いたかったわ……オニキス……。
……おふ……くろ……?
──ずっと待ってたのよ、ここで……。
……あんた、何言ってんだ……? だいたいなんでこんなとこに……あ……。
──さあ、こっちへいらっしゃい……。
……へっ、ヤダね。なんで私があんたの言うこと聞かなきゃなんねーのさ。
──私は母親であなたは娘よ。──そうでしょう?
……勝手なこと言ってんじゃねーよ。
──お母さんはあなたを助けにきたのよ……。
……助ける? 始末をつけるの間違いじゃねーのか? ──全部知ってるんだぜ、あんたたちが何をしてきたのか。
──そう……。でも、私があなたを助けたいのはあなたを愛しているからよ。あなたが……大切な娘だからよ……。
さあ、おいで……。
……何、言ってんだよ……。
──何を怖がっているの? 私の大切なオニキス……。さあ……。
……何……私を見捨てといて……今更……今更何言ってんだよぉ! 今更よぉ、何だってんだよぉ!
──オニキス……。
……やめろ……。
──オニキス……。
……やめろ……。やめろ!
──オニキス……。
……やめろやめろやめろぉ!!! 私の名を呼ぶなぁ!
──オニキス……。私が、罪の呪縛から解き放ってあげる……。
……うるせー! お前なんか……。お前なんかぁ!
──これが、あなたにしてあげられる、たったひとつのことだから……。
──ごめんね……。
……お…か…あ………さん………。
