ガルフ:「なかなかやるじゃないか」
ラグランジェ:「そいつはどうも」
ガルフ:「ラズリを救うって言ってたな……。どうやって助けるつもりなんだ?」
ラグランジェ:「ボクには何もできない……。でもあの人が──アメシストさんがきっとラズリさんを罪の束縛から解き放ってくれる!」
ガルフ:「『鍵』の運命から逃れる方法は『死』しかない……。それも、分かってるのか……?」
ラグランジェ:「でもこのままじゃ……」
ガルフ:「ラズリは死ぬわけじゃない! 『紫の中空』で、生き続けるんだ!」
ラグランジェ:「肉体が滅びて……魂だけが永遠に暗闇の中を漂い続ける……。そんなの……そんなの生きてるって言わない!
そんなの……死ぬよりむごい……」
ガルフ:「だからラズリに「死」の安息を与えるのか? 世界も滅びて、それで全ておしまいか?
ふざけるな!
生きていれば……生きてさえいれば助けることだってできる!
オレは……ラズリも世界も救ってみせる!」
ラグランジェ:「そんなことは不可能だ! 思いつきでいいかげんなことを言わないでください!」
ラグランジェ:「ぜえ……ぜえ……ぜえ……」
ガルフ:(口元の血をぬぐいながら)「だいたいなぜ『紫の中空』はラズリを求めているんだ?
──お前の心が、ラズリを求めているからじゃないのか?」
ラグランジェ:「ボクは……ラズリさんを守りたい……。苦しんでほしくない……。幸せになってもらいたい……」
ガルフ:「……違うな。お前はラズリに助けてもらいたいんだ。"ラズリを愛すること"で救われたいと願っているだけだ。
そんなのは……愛じゃない」
ラグランジェ:「違う……。違う……」
ガルフ:「──お前は今まで、あいつの何を見てきたんだ? 世界が滅びて自分が救われるなんて結末──あいつは望んでなんかいない!」
ラグランジェ:「違う……。ボクは……。ボクは………!」
ラグランジェ:「お あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……!」
ラグランジェ:「Π∂¬∃∀Π……!」
ガルフ:「な……んだ……?」
ラグランジェ:「∂¬∃ΘΘ∃⊥ΔΓΨ!」
ガルフ:「消え……てく……?」
ラグランジェ:「ΓΞ……Θ……」
ガルフ:「帰っていくのか……生まれた場所へ……」
ラグランジェ:「Δ……」
ガルフ:「ラズリは連れ戻す……必ずな」
ラズリ:「母様……なのね……」
アメシスト:「ええ……」
ラズリ:「初めまして──と言うのも変だね」
アメシスト:(くすっと笑って)「そうね。──ラズリ、会いたかったわ……」
ラズリ:「あたしも……」
GM:アメシストが君の体をぎゅっと抱きしめる。すると──君の体は動かなくなる。
ラズリ:ほえ?
GM:そして君の手から『十六夜』を取り、すっと離れる。
ラズリ:「ち、ちょっと……?」
アメシスト:「私が、呪縛から解き放ってあげるからね……」
ラズリ:「え……?」
GM:すっと『十六夜』の切っ先をラズリの左胸に──
ラズリ:「あたしを……殺すの……?」
アメシスト:「そうよ……」
ラズリ:「ウソでしょ? 母様……どうして……?」
アメシスト:(首を横に振って)「知らない方が、いいこともあるのよ」
ラズリ:「お願い! ちゃんとわけを説明して! 何も知らないまま、死にたくない!」
アメシスト:「それはできないわ。わけを聞けば、あなたは悲しむもの……」
ガルフ:「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ガルフ:「ラズリは殺させない!」
ラズリ:「ガルフ! 来てくれたんだ……」
アメシスト:「ガルフ……。そこをどきなさい」
ガルフ:「親が娘を殺すのかよ」
アメシスト:「あなたこそ、ラズリに……ラズリに永遠の苦しみを与えるつもりですか?」
ガルフ:「黙れ!」
ラズリ:「なに……? どういうこと……?」
ガルフ:「話は後だ。ラズリは連れて帰る」
アメシスト:「もう『鍵』の呪縛から彼女を解放してあげて」
ガルフ:「それは……できない」
アメシスト:「ならば……力ずくでいきます!」
GM:んで、君の体は金縛りにあったように動けなくなる。
ガルフ:「くっそ……!」
アメシスト:「まだ……邪魔するつもりですか?」
ガルフ:「当たり前だ!」
ガルフ:「ぐぁっ!」
GM:そのまま剣を横に払って斬り裂く。
ガルフ:「がふっ! ごほっごほっごほっ!」(大量に血を吐く)
ラズリ:「ガルフぅ!」
アメシスト:「これでもう邪魔はできないでしょう。(くるりと振り向いて)さあ、ラズリ……」
ラズリ:「ガルフ! ガルフぅー!」
アメシスト:「この、『十六夜』で──」
ラズリ:(ぎゅっと目を閉じる)
――――ザヴァッ!!!
剣を振り下ろそうとしたアメシストの胸から、斬馬刀が生えていた。
ガルフの斬馬刀が、背中から貫いたのだ。
ラズリの体を、鮮血が赤く染める──
ガルフ:「言ったはずだ……殺らせないと」
ラズリ:「イ……イヤぁ…………」
アメシスト:「ラズリ……私………間違ってないよね?」
ガルフ:「ラズリ……もう泣くなよ……」
ラズリ:「ぐすっ……。だって……」
ガルフ:「さ、帰ろうぜ」
ラズリ:「キズ……大丈夫?」
ガルフ:「ホント言うと、かなりやばい。だから早く……」
ラズリ:「な、なに……?」
ガルフ:「──帰るんだ。お前だけな」
ラズリ:「ガルフは? ガルフはどうするの?」
ガルフ:「さあな……。『紫の中空』に残るのか、『赤の世界』に行くのか……正に、神のみぞ知る、ってやつだ……」
ラズリ:「ガルフも一緒に帰ろう! ねえ! ガルフ!」
ガルフ:「ラズリ、よく聞いてくれ……。お前が『青の世界』に戻ってから、一週間後に『扉』が閉じる。
今度こそちゃんと、しっかりな。それからさらに一週間後に……お前は死ぬ。
肉体は滅び、魂は『紫の中空』に帰り、漂い続ける……。そういう『運命』に、なってしまった……」
ラズリ:「『鍵』の『運命』……」
ガルフ:「俺は……お前も世界も守るつもりだった。お前の『運命』を変えるつもりだった。だが……今は無理みたいだな」
ラズリ:「うん……。でもいいよ。世界が滅びるより、あたしが苦しんだ方がいい」
ガルフ:「いつか……いつかきっと助けてやる。今度こそ、必ずな」
ラズリ:「うん……」
ガルフ:「それから──これ、ルーンに渡しといてくれ」
ラズリ:「これ……『朔夜』?」
ガルフ:「ああ、頼んだぜ。それから……あいつらのこと、許してやってくれな。
アメシストも、アユモも、お前の幸せを願っていた。それは、間違いない。
お前が全ての罪を背負うなんて理不尽で残酷だが……みんなのこと、嫌いにならないでくれ」
ラズリ:「大丈夫だよ。あたし、みんなのこと、大好きだから……」
ガルフ:「そうか……」
ラズリ:「うん……」
ガルフ:「じゃあ、な」
ラズリ:「うん……」
カレン:「ラズリ、しっかりして。ラズリ!」
ラズリ:「カレン……ちゃん?」
カレン:「うん。わたしが、分かる?」
ラズリ:「分かるよ。当たり前じゃない……。カレンちゃんこそ、大丈夫なの?」
カレン:「さっきも言ったじゃない。わたしは大丈夫だよ」
カレン:「終わったんだね……。今度こそ……」
ラズリ:「うん……。でも……みんな、みんないなくなってしまった……」
カレン:「ねえ、泣かないで……。フローラもクロヌシも、わたしもいるじゃない。ね、ずっと、わたしが傍にいるから」
ラズリ:「ホントに?」
カレン:「ホントに」
ラズリ:「絶対?」
カレン:「絶対」
ラズリ:「ホントに絶対?」
カレン:「ホントに絶対!」
ラズリ:(顔をうずめて)「ありがと……」
フローラ:「あっちの方、どうなったかな」
クロヌシ:「さあ、な。気になるなら、早く傷を治してくれ」
フローラ:「えらそーに言うな。治してもらう立場だろ、お前は」
GM:などと君たちが夫婦漫才をしていると──
クロヌシ:誰が夫婦だ、誰が。
GM:この人たちがやってくる。クレリアの姉セイアと、クレリアの妹リリア。
セイア:「おふくろは──ナタリーはどうなった?」
フローラ:「ナタリーなら……湖の方にいるよ」
セイア:「死んだ、の?」
フローラ:「……ああ。クレリアは、そこだ」
セイア:「……………」
GM:ふらっとリリアが気絶する。刺激が強すぎたみたいだね。
セイア:「何があったのか……話してくれない?」
フローラ:(ちょっとためらった後)「ああ、いいぜ……」
セイア:「──そんなことが……」
フローラ:「すまない。お前の家族を、死に追いやってしまって……」
セイア:「あんたが謝ることじゃないよ。おふくろもクレリアも、自分で望んだんだ……」
セイア:「ん……? 闇が……消えてく……?」
フローラ:「え……?」(空を見上げる)
GM:さっきまで空を覆っていた『闇の結晶(メデューム)』が消えていく。もう夜になっていたらしく、星と──金色に輝く物体が見える。
セイア:「何、あれ……」
クロヌシ:「『月の船』……? いや、あれは……まさか……」
GM:そう、『月』が、空に浮かんでいるのだ。
フローラ:「あれが……『月』……」
GM:この世界の『月』は衛星じゃない。『光』と『闇』が混合した『物体』なのだ。エネルギーの塊みたいなもんだね。
フローラ:「どうなってんだ……?」
GM:闇が晴れ、『月』が蘇った──神々の戦いが、終わったってこと。
クロヌシ:「そうか……。終わったのか……」(タバコに火をつける)
セイア:「結局……何もしなくても戦いは終わったんだね……。
おふくろやクレリアたちがしてきたことって……何だったんだろうな……」
天に『月』が輝き、金色の光の粒が、雪のように地上に降り注ぐ。
淡い金色の光に包まれながら、人々は思いを馳せる。
死んでいった者たちに。
これからを生きていく者たちに。
とても、とてもやさしい気持ちで───
