MOND REPLAYV


epilogue:09[マルクト<王国>/イシュタル]

GM:さ、いよいよイシュタルだね。

サリース:「姉夫婦だけでも助けにいきたいな。『弁天』のマスターとか」

アルバス:「運がよければ助かるだろう」

ゼナ:「魔法アカデミーの人たちとか」

トパーズ:「リューセのじーちゃんばーちゃんもね」
 

 “始まりの地”イシュタル──

 最初、空飛ぶ物体に人々は驚いたようだった。

 が、それが救いの『船』であることが分かると、次々と集まってきた。

 子供と女性を優先して。

 若い男たちが老人を乗せようとし、老人が首を横に振って他の人に席を譲る。

 そんな人々の様子を見ながら、ゼナは実感していた。

 やっと、イシュタルに帰ってきたんだと。

 ランディは、がたがたと震えていた。

 夕闇せまる港の倉庫の片隅で、小さくなって、彼は何も見ないようにしていた。何も聞かないようにしていた。

 フローラはどうしただろう……?

 ついさっきまで、一緒にいたのだ。

 港ではぐれ、そのままランディだけが逃げ延びた。彼女を探しにいく勇気は……なかった。

 彼は、『嵐』が過ぎるのを待った。

「!?」

 ランディは異変に気づいた。

 ずぶずぶと……身体が沈んでいく。

 足元がまるで粘土のようにやわらくなっていた。

 逃げたい……その彼の『願い』が、具現化したのだ。

 このまま地中深く逃げれば、助かるに違いない。

 ランディは安堵し……ふと、フローラのことを思った。

 そしてなぜか……数カ月前に戦った、変な六人組のことを思い出していた。

 冷ややかな目。自分のことを心底バカにした態度。そしてボコボコにされ……ランディは大怪我を負った。
 

 チクショウ……
 

 無性にくやしかった。自分に腹が立った。

 自分は何だ? 名誉ある百二十八将軍のひとりではなかったのか?

 やれるはずだ。俺はまだ……戦える。

ウァアアァァァァアァアアアアアアアアアアアアア!!!

 ランディは叫び、深い穴をよじのぼった。

 まるで、鯉が滝を登るように。

 彼が目にしたのは、今まさに襲われようとしているフローラの姿だった。

 武器を取り、走る。

だ、りゃああああああ……!!!

 斬りかかり……足元が滑って派手に転んだ。

 その音にフローラが気づき、ぱあっと表情を明るくする。

「ランディ! ランディ、たすけて!」

 やれる! ……俺は戦える!

があああああ!!!

 ランディの叫びに応えるように――フローラを襲っていたバケモノの身体が真っ二つに裂けた。

「……!? 俺……やった……? ……やって……ないよな……?」

「……お前、何やってんだ? そんなだからお前はダメだって言われるんだ」

 バケモノの向こうにいたのは……もう二度と会いたくなかった男、アルバス=ファルバティスだった。

 サリースは、迷っていた。

 できることなら、今すぐにでも姉夫婦のところへ──サラのところへ行きたかった。

 自分には翼がある。飛べば、すぐだ。

 だが……
 

 どうする……? どうしよう……?
 

 悩んで、迷って、どうしようもなくて……

「サリースじゃない。……無事だったの?」

「ほえ?」

 思わずリューセのような返事をしてしまった。

 目の前に立っていたのは、大量のパンを抱えた姉夫婦だった。そしてそのパンを受け取っていたのが、『弁天』のマスターだったから二度ビックリだ。

 サリースは神に──よく知った顔の女神に感謝した。

 しかし。

 現実というのはやはりどこか残酷で。

 ゼナが駆けつけたとき……リューセの育ての親、気のいい老夫婦は既に亡くなった後だった。
 
 

epilogue:10[至福<ケテール>/ニャルラトホテプ]

 “最後の楽園”ニャルラトホテプ──

 『大いなる遺産』の部屋の更に先。フレイヴスがいたという場所は、湖のほとりだった。

 緑に囲まれた美しい湖のまんなかに、『女神の塔』が逆さまに突き刺さっている。
 

リューセ:「『女神の塔』が……こんなところに?」

フレイヴス:「墜ちたんだ……アールマティから。──さて、と、準備は整ったか? リューセに、『オファニエルの力の結晶』、クックルックルーフに……『核<コア>』だ」

リューセ:「こあ?」

フレイヴス:「今、核<コア>は誰が持ってるんだ?」

ビッケ:「わたいだわさ。ユンケの右手、吸収したから」

フレイヴス:「よし、なら『制御』できるな。……それじゃガンバ、世界中のクックルックルーフを集めてくれ」

ガンバ:「101万匹クックルちゃん大行進だわさ〜!」

リューセ:「……ホントにやるの?」
 

 その正体を知らなければ、それはとてもキレイな光景だった。

 星々がそこに集うかのように。

 砕け散るダイヤモンドを撮ったフィルムを巻き戻すかのように。

 世界中のクックルックルーフが、集まっていた。

 それは、次々にガンバの身体と『融合』していく。

 「みんなとひとつになる」──それがガンバの願いであり、クックルックルーフという種族の求めていた『お宝』だったから。
 

フレイヴス:「元々クックルックルーフと南キャンバス大陸人は同じモノ──『C.L.R』だった」

ガンバ:(クック)(ルック)(ルーフ)だわさ。

フレイヴス:「そしてその『虚ろにて解放されし愛児たち』は何からできていたか……覚えているか?」

リューセ:「アムリタ……?」

フレイヴス:「そうだ。つまり……クックルックルーフの『融合体』──女神の血であった『アムリタ』を使い、リューセ、お前の『肉体』を再生する」

リューセ:……恐怖

GM:ん?

リューセ:アルバスが何やっても平気だった私だけど……今初めて『恐怖』というものを感じてしまった……(笑)。

GM:そりゃ……クックルックルーフが自分の身体になるんだからなァ……。

ガンバ:安心するだわさ、クックルックルーフとしての『人格』はわたいが全部引き継ぐから。リューセにあげるのは、クックルックルーフの『抜け殻』だけだわさ。

GM:てことは……ユナ──ユンケとガンバは、『融合体』にはならないんだな?

ガンバ:自分でひとつになることを望んでいながら(笑)。でもユナは4000年前も融合を拒んでいたし、わたいも何だか拒みたい気分だから、しょーがないだわさ。

GM:では、『儀式』を始めることにしよう。フレイヴスは、ニーヴェ・三姉妹・タナトスのサポートを受け、魔法陣を描いていく。その中心に置かれているのはタナトスが持っていた『箱』だ。
 

 魔法陣の中心にある三角形の頂点に、リューセと『結晶体』とクックルックルーフの『融合体』が配置される。

 リューセはトランス状態となり、『結晶体』は静かに脈動し、『融合体』はどんどんクックルックルーフを飲み込んでいく。
 

ニーヴェ:「ネメシスの名において女神に申し上げる。我が血の一部を持って『ミルラ』とし、オファニエルの元に還らんことを願う」

タナトス:「タナトスの名において女神に申し上げる。我が血の一部を持って『ミルラ』とし、オファニエルの元に還らんことを願う」
 

 ニーヴェとタナトスの血が魔法陣に注がれる。

 魔法陣はクックルックルーフという『光』を吸い込みながら、輝き続けた。

 日が傾き、空が夕日に染まっても、『儀式』は続いた。

リューセ:私の願い、叶うのかな……。
 

 私の『願い』……それは、みんながほえほえ〜っと生きていけること。

 誰も傷つかずに……生きていけるような世界になること。

 もし傷つくなら……それは大切な人のためだけで……

 流されるのはやさしい涙で……

 それで、大切な人がすこぅししあわせになる……

 そんな、やわらかな世界だったらいいのに……

 日没とともに『儀式』は終わり……魔法陣の中心に、リューセとガンバとユナが残った。

 女神オファニエルは復活した――リューセの、願いと共に。

 日が沈む。

 闇の中、街が『光』で照らし出される。

 エスペルプレーナ2は、限界以上に人を積んでいた。

 アルバスたちも、さすがに疲労の色を隠せない。

 もう……限界だった。

 アルバスは『船』の舳先で街を──世界を見下ろしていた。

 シモーヌを救えなかった。

 老夫婦も助けられなかった。

 他にもたくさんたくさん、見殺しにしてきた。
 

 オレの判断は……間違ってなかったはずだ……
 

 でも……心が痛い。

 アルバスは、天を仰いだ。
 

 なあ、女神よ……

 オレの『願い』、まだ叶ってないぞ……

 オレの願い……

 恥ずかしくて、とても人前じゃ言えないけど……

 オレの願いは……

 『南キャンバス大陸に、繁栄と平和を』……だ。
 

   本当に、願えるの……?
 

 それは女神の問いかけだったのか。それとも、自分の内なる声だったのか。
 

   世界中の人たちの思いを凌駕するその『願い』を……本当にあなたは願えるの?
 

 アルバスは、答えた。

当然だ

 それは、祈りだった。

 アルバスとリューセの『願い』はひとつとなり、世界中を駆け巡った。

 そして──

 次々と『光』は消えていき……世界は闇に包まれた。



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