GM:さ、いよいよイシュタルだね。
サリース:「姉夫婦だけでも助けにいきたいな。『弁天』のマスターとか」
アルバス:「運がよければ助かるだろう」
ゼナ:「魔法アカデミーの人たちとか」
トパーズ:「リューセのじーちゃんばーちゃんもね」
“始まりの地”イシュタル──
最初、空飛ぶ物体に人々は驚いたようだった。
が、それが救いの『船』であることが分かると、次々と集まってきた。
子供と女性を優先して。
若い男たちが老人を乗せようとし、老人が首を横に振って他の人に席を譲る。
そんな人々の様子を見ながら、ゼナは実感していた。
やっと、イシュタルに帰ってきたんだと。
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ランディは、がたがたと震えていた。
夕闇せまる港の倉庫の片隅で、小さくなって、彼は何も見ないようにしていた。何も聞かないようにしていた。
フローラはどうしただろう……?
ついさっきまで、一緒にいたのだ。
港ではぐれ、そのままランディだけが逃げ延びた。彼女を探しにいく勇気は……なかった。
彼は、『嵐』が過ぎるのを待った。
「!?」
ランディは異変に気づいた。
ずぶずぶと……身体が沈んでいく。
足元がまるで粘土のようにやわらくなっていた。
逃げたい……その彼の『願い』が、具現化したのだ。
このまま地中深く逃げれば、助かるに違いない。
ランディは安堵し……ふと、フローラのことを思った。
そしてなぜか……数カ月前に戦った、変な六人組のことを思い出していた。
冷ややかな目。自分のことを心底バカにした態度。そしてボコボコにされ……ランディは大怪我を負った。
チクショウ……
無性にくやしかった。自分に腹が立った。
自分は何だ? 名誉ある百二十八将軍のひとりではなかったのか?
やれるはずだ。俺はまだ……戦える。
「ウァアアァァァァアァアアアアアアアアアアアアア!!!」
ランディは叫び、深い穴をよじのぼった。
まるで、鯉が滝を登るように。
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彼が目にしたのは、今まさに襲われようとしているフローラの姿だった。
武器を取り、走る。
「だ、りゃああああああ……!!!」
斬りかかり……足元が滑って派手に転んだ。
その音にフローラが気づき、ぱあっと表情を明るくする。
「ランディ! ランディ、たすけて!」
やれる! ……俺は戦える!
「があああああ!!!」
ランディの叫びに応えるように――フローラを襲っていたバケモノの身体が真っ二つに裂けた。
「……!? 俺……やった……? ……やって……ないよな……?」
「……お前、何やってんだ? そんなだからお前はダメだって言われるんだ」
バケモノの向こうにいたのは……もう二度と会いたくなかった男、アルバス=ファルバティスだった。
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サリースは、迷っていた。
できることなら、今すぐにでも姉夫婦のところへ──サラのところへ行きたかった。
自分には翼がある。飛べば、すぐだ。
だが……
どうする……? どうしよう……?
悩んで、迷って、どうしようもなくて……
「サリースじゃない。……無事だったの?」
「ほえ?」
思わずリューセのような返事をしてしまった。
目の前に立っていたのは、大量のパンを抱えた姉夫婦だった。そしてそのパンを受け取っていたのが、『弁天』のマスターだったから二度ビックリだ。
サリースは神に──よく知った顔の女神に感謝した。
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しかし。
現実というのはやはりどこか残酷で。
ゼナが駆けつけたとき……リューセの育ての親、気のいい老夫婦は既に亡くなった後だった。
epilogue:10[至福<ケテール>/ニャルラトホテプ]
“最後の楽園”ニャルラトホテプ──
『大いなる遺産』の部屋の更に先。フレイヴスがいたという場所は、湖のほとりだった。
緑に囲まれた美しい湖のまんなかに、『女神の塔』が逆さまに突き刺さっている。
リューセ:「『女神の塔』が……こんなところに?」
フレイヴス:「墜ちたんだ……アールマティから。──さて、と、準備は整ったか? リューセに、『オファニエルの力の結晶』、クックルックルーフに……『核<コア>』だ」
リューセ:「こあ?」
フレイヴス:「今、核<コア>は誰が持ってるんだ?」
ビッケ:「わたいだわさ。ユンケの右手、吸収したから」
フレイヴス:「よし、なら『制御』できるな。……それじゃガンバ、世界中のクックルックルーフを集めてくれ」
ガンバ:「101万匹クックルちゃん大行進だわさ〜!」
リューセ:「……ホントにやるの?」
その正体を知らなければ、それはとてもキレイな光景だった。
星々がそこに集うかのように。
砕け散るダイヤモンドを撮ったフィルムを巻き戻すかのように。
世界中のクックルックルーフが、集まっていた。
それは、次々にガンバの身体と『融合』していく。
「みんなとひとつになる」──それがガンバの願いであり、クックルックルーフという種族の求めていた『お宝』だったから。
フレイヴス:「元々クックルックルーフと南キャンバス大陸人は同じモノ──『C.L.R』だった」
ガンバ:C(クック)L(ルック)R(ルーフ)だわさ。
フレイヴス:「そしてその『虚ろにて解放されし愛児たち』は何からできていたか……覚えているか?」
リューセ:「アムリタ……?」
フレイヴス:「そうだ。つまり……クックルックルーフの『融合体』──女神の血であった『アムリタ』を使い、リューセ、お前の『肉体』を再生する」
リューセ:……恐怖。
GM:ん?
リューセ:アルバスが何やっても平気だった私だけど……今初めて『恐怖』というものを感じてしまった……(笑)。
GM:そりゃ……クックルックルーフが自分の身体になるんだからなァ……。
ガンバ:安心するだわさ、クックルックルーフとしての『人格』はわたいが全部引き継ぐから。リューセにあげるのは、クックルックルーフの『抜け殻』だけだわさ。
GM:てことは……ユナ──ユンケとガンバは、『融合体』にはならないんだな?
ガンバ:自分でひとつになることを望んでいながら(笑)。でもユナは4000年前も融合を拒んでいたし、わたいも何だか拒みたい気分だから、しょーがないだわさ。
GM:では、『儀式』を始めることにしよう。フレイヴスは、ニーヴェ・三姉妹・タナトスのサポートを受け、魔法陣を描いていく。その中心に置かれているのはタナトスが持っていた『箱』だ。
魔法陣の中心にある三角形の頂点に、リューセと『結晶体』とクックルックルーフの『融合体』が配置される。
リューセはトランス状態となり、『結晶体』は静かに脈動し、『融合体』はどんどんクックルックルーフを飲み込んでいく。
ニーヴェ:「ネメシスの名において女神に申し上げる。我が血の一部を持って『ミルラ』とし、オファニエルの元に還らんことを願う」
タナトス:「タナトスの名において女神に申し上げる。我が血の一部を持って『ミルラ』とし、オファニエルの元に還らんことを願う」
ニーヴェとタナトスの血が魔法陣に注がれる。
魔法陣はクックルックルーフという『光』を吸い込みながら、輝き続けた。
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日が傾き、空が夕日に染まっても、『儀式』は続いた。
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リューセ:私の願い、叶うのかな……。
私の『願い』……それは、みんながほえほえ〜っと生きていけること。
誰も傷つかずに……生きていけるような世界になること。
もし傷つくなら……それは大切な人のためだけで……
流されるのはやさしい涙で……
それで、大切な人がすこぅししあわせになる……
そんな、やわらかな世界だったらいいのに……
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日没とともに『儀式』は終わり……魔法陣の中心に、リューセとガンバとユナが残った。
女神オファニエルは復活した――リューセの、願いと共に。
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日が沈む。
闇の中、街が『光』で照らし出される。
エスペルプレーナ2は、限界以上に人を積んでいた。
アルバスたちも、さすがに疲労の色を隠せない。
もう……限界だった。
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アルバスは『船』の舳先で街を──世界を見下ろしていた。
シモーヌを救えなかった。
老夫婦も助けられなかった。
他にもたくさんたくさん、見殺しにしてきた。
オレの判断は……間違ってなかったはずだ……
でも……心が痛い。
アルバスは、天を仰いだ。
なあ、女神よ……
オレの『願い』、まだ叶ってないぞ……
オレの願い……
恥ずかしくて、とても人前じゃ言えないけど……
オレの願いは……
『南キャンバス大陸に、繁栄と平和を』……だ。
本当に、願えるの……?
それは女神の問いかけだったのか。それとも、自分の内なる声だったのか。
世界中の人たちの思いを凌駕するその『願い』を……本当にあなたは願えるの?
アルバスは、答えた。
「当然だ」
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それは、祈りだった。
アルバスとリューセの『願い』はひとつとなり、世界中を駆け巡った。
そして──
次々と『光』は消えていき……世界は闇に包まれた。


