OP.1[愛の温度]-Wish you were here- 07


 日が暮れていく。森の中に闇と静寂が訪れ、炎のはぜる音が耳につく。

 見張りの一組目はシュリとエミリー、そしてレイチェル。
 

GM:(いきなりですか……)ではまず最初はシュリとエミリーとレイチェルね。エミリーはプレイヤーがいないのでGMが演じるんで。

レイチェル:──私はいろいろなセンサーを駆使して、辺りを絶え間なく見ておく。

GM:エミリーは……じーっと、シュリの方を見ている。

シュリ:その視線には、気づかないフリをしておこう。

レイチェル:「シュリが、どうかしたのか」

エミリー:「何でもないわ」

レイチェル:そう言われると、何も言えなくなってしまう。

シュリ:レイチェルは人情の機微を解さないから。

レイチェル:そんな……(←心外なようだ)。

シュリ:気配を感知するのが苦手、っていうのをちょっと言い方変えただけでしょ。

レイチェル:全然違う。

GM:んじゃレイチェル、ちょっと判定を。エミリーのとある変化に気づくかどうか。

レイチェル:とある変化……? (コロコロ)成功している。

GM:エミリーの瞳の色は普段灰色で、興奮時に右目が緑に左目が黄色に変化するのだけど──

シュリ:初めて聞いた。

GM:うん。ちっとも生かす機会がなかった設定(笑)。
 

 エミリーの裏設定には、他に「左手薬指第1関節からなし(生まれつき)」というのもあったりする。
 

GM:そのエミリーの瞳の色が、両方とも黄色くなっていることに気づいた。炎の照り返しとかではないね。

シュリ:……黄色い目……。
 

 その視線から逃れるように目を背けても、心はかき乱されていく。

 思い出すのは昔のこと。まだアーケインに来る前のこと。
 

 彼女は暗闇の中にいた。

 なぜここにいるんだろうと考え……父と母が帰ってくるのを待っていたことを思い出した。

 小さな村で、両親の帰りを待っていた。

 ふたりは共に魔術師で、よくあちこち旅をして回っていた。

 何かを必死で探しているようで……彼女はその旅には同行させてもらえなかった。

 確か12歳のときだった。

 村を、黒装束の一団が襲った。邪教の信者らしかった。

 父も母も留守で、彼らは父を探しているようだった。
 

 その後のことは曖昧にしか覚えていない。

 たぶん、あの邪教の集団に拉致された。

 彼女の髪をつかみ、強引に引き寄せ、顔を見て「ああ、この子だ」と言った黒い衣装の女──その女の瞳が濁った金色だったことだけ、覚えている。
 

エミリー:「どうしたのシュリ? ……顔色が悪いわ」

シュリ:「………………」
 

 その後、どういう経緯か知らないが、彼女は『ホフヌング』という組織に引き取られた。

 いろいろ調べられた、と思う。

 そしてどういうつもりでそうしたのかは分からないが……闇が巣食う部屋に閉じ込められた。

 ぼんやりと明かりがついているのは食料を供給してくれるらしい機械と、武器庫。

 自分を殺そうとする、『敵』

 闇の中で戦う日々。自分だけで生き延びる力を、無理矢理にでも身体に覚えさせる日々。
 
 

 5年が過ぎた。
 
 

 もうイヤだった。暗闇も。殺すという行為も。
 

「すまない、助けにくるのが遅くなってしまった」

「5年……? ……5日じゃないのか?」

「……そうか、そういうことか。……落ち着いてよく聞くんだ。あの部屋での1年は、外では1日なんだ」
 

 ……なにそれ。イイワケにしたって、もうちょっとマシなものはないの?
 

シュリ:「……──じるもんか」

レイチェル:「え?」

シュリ:「ごめん。何でもない。……何でもない」

エミリー:「無理しなくていいのに」
 

 見つめられる。黄色い瞳に。
 

エミリー:「覚えているはずなのに、なぜ気づかないの? ……どうして、何も言ってくれないの?」

シュリ:(黙って首を横に振る)

エミリー:「わたしの気持ちを分かってもらおうなんて思ってないから。ただ、気づいてほしかった。……だから、事実だけを話すわ」

レイチェル:「何の……話をしている?」

エミリー:「──もうひとりのわたしのこと」

 その黄色い瞳は、シュリを見つめ続ける。

 見つめられるだけで、辱められてるような気分になる。言葉によるなぶりは続く。
 

レイチェル:「ふたり? 双子? それとも……二重人格?」

エミリー:「そんなにはっきりと分かれてるわけじゃないわ。エミリー=リーディングのもうひとつの顔。ちょっと、自分の欲望に素直になった、わたしのあるべき姿と言ってもいい。何が原因でこうなったというワケでもないのよ? わたしは、生まれたときからこうだった」

シュリ:「………………」

レイチェル:「理解不能だ。何の話を──」

エミリー:「──今回の事件の犯人はわたしだと言っているのよ」

レイチェル:「な……にを……?」

エミリー:「寮の地下にあった死体のワイン漬け、あれをやったのもわたし。隠された礼拝堂は、わたしのもの」

フウゲツ(仮眠中):なにをぅ!?

エミリー:「聞いてる、シュリ。わたしはあなたに話しているのよ」

シュリ:「………………」

エミリー:「それだけじゃない。チンピラをそそのかして、スノウを襲うように仕向けたのもわたし。その5年前、彼女の姉に同じようにしたのもわたし」

フウゲツ(仮眠中):……それはアレか? 俺に今すぐ斬り捨ててくれと言っているのか?

エミリー:「そして──もう気づいているんでしょ──シュリ、アナタを昔連れ去ったのも、わたしだわ」
 

 シュリの身体は細かく震えていた。焚き火が押しやったはずの夜の闇が、肉体を蝕んでいくような気がした。
 

シュリ:「……レイチェル」

レイチェル:「シュリ」

シュリ:「アーケインに帰りたい……。ここに……いたくない……」

レイチェル:「………………。……すぐに帰れる」
 

 ぴく、とリトナが顔を上げた。エミリーにではなく、近づいてくる気配に対して。

 そしてレイチェルも、その気配を感知していた。

 森の奥から姿を現したのは──『仮面のもの』たち、3人。
 

レイチェル:わざわざそちらから来たか。エミリーと『仮面』は仲間ということ?

GM:そんな感じだ。──他に気づきそうな人は?

シュリ:あたしダメ。呆然としてて、それどころじゃない。

フウゲツ:俺が起きる〜! そしてエミリーを斬ーる!

レイチェル:シュリ、寝ている人たちを起こして。

シュリ:ダメ。朦朧としてるから。

レイチェル:そうか。そうだろうな。

リトナ:木の上に逃げる。そのとき、フウゲツの顔を踏み台にする。

フウゲツ:よし、それで目が覚めるぜ! ちょっと顔が痛いが。

レイチェル:そんなことしなくても、私が声をかけます。「みんな起きて。敵襲です」

ユリア:「ふみゅう」

GM:メイリアも跳ね起きるよ。んで、起きてみると、大変なことに。

ユリア:「エミリーが仮面の男にさらわれてしまってるれす!」

フウゲツ:助けなくていい。そんな気がする(笑)。

レイチェル:「エミリーも敵だから。逃がしちゃダメ」

フウゲツ:「……エミリーも敵?」

ユリア:「エミリー無敵? それはヤバイれすね」

レイチェル:「そうではなくて」

メイリア:「………………こんなところで」

フウゲツ:出たな『仮面』! 峰打ちだー! ずばー!

シュリ:斬ってる斬ってる。

GM:では戦闘ってことで、イニシアティブを振ろう。

シュリ:あたし振らない。振れない、固まっちゃってて。

フウゲツ:メイリアは俺の後ろに隠れてるんだ!

GM:(みんなの出目を聞いて)こちらからか。では、エミリーがユリアの関節をとってみよう。(コロコロ)今日は調子悪いな、90とか振ってる。
 

 『仮面のもの』たちはそれぞれの相手と距離をつめる。
 

フウゲツ:シュリをかばうように立つ。そして攻撃だー。(コロコロ)いえーい、92〜!(←相変わらず出目が悪い)

ユリア:エミリーから離れて(笑)、武器を持っているヤツに。(コロコロ)普通に成功。

GM:関節をとられてしまったか。

レイチェル:(コロコロ)なんてことだ、転んでしまった。

GM:よっしゃ、そこをぐりぐり踏んでやろ〜。

レイチェル:ぐう。

シュリ:知力の判定に成功したら、何とか朦朧状態から回復したことにしよっと。
 

 焚き火の明かりの中での戦い。

 サイコロの出目が悪いせいで(ユリアも96を振ったり)技をかけては外されて……という展開が続いたりしたものの、戦いはPC有利な状態のまま進んでいった。
 

GM:(コロコロ)ダメだ、エミリー。

シュリ:しょせんお前の実力はその程度だ、と(←『心』判定に成功して戦線復帰)。

ユリア:にわかプロレスファンれすからね。

GM:根拠のない自信には満ち満ちているのにー。
 

 数ターンののち……戦いは終わった。



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