ビオ:んあ?
GM:洞窟を抜けたところがちょっとした平地になっていて、そのすぐ向こうにでっかいクレバスがあると思いねえ。
トパーズ:落ちたら死にそう。
GM:そしてその向こうに見えるのが鬼哭山(きこくざん)。鬼哭山は標高4000メートル。死霊の霊が集う霊山とされ、時折麓一帯に吹きおろす鬼哭おろしはまるで死にきれぬ亡者の声のように聞こえる。で、その山の盆地に幽谷の民が住んでいる。アシャスカーとアルサという2つの部族だね。
リトナ:ほうほう。
GM:黒い肌と鋼の肉体を持つ彼らはルフトの使い手であり、ユリアの師匠もまた、幽谷の民。
ドモ・ルール:ということはユリアはこんなとこまで修行に来ていたのだな。
GM:そうだね。──ついでに裏設定を明かしておくと、この一帯は幽谷の民でも滅多に寄り付かないという、<禁猟区(サンクチュアリ)>であり……──そして今君たちの目の前には、ユリア──ユリウスが立っている。
一同:……は?
ドモ・ルール:ユリアって、カゴルマで別れたんでなかった?
GM:そうだね。で、その後、いつも修行している場所へ向かった。アーケインの近くにある獣人の街クリムソンの北にある、山の奥へ。
ユリア:山の中にある、何だかふみょみょみょーんとする洞窟を抜けると、修行場に着くんです。
トパーズ:……それが、ここ? でもここって北キャンバス大陸の南端なんじゃ……。
ドモ・ルール:テレポートか?
GM:ふみょみょみょーんの洞窟内の空間がねじれてるんだろうな、という予測は立つね。
リトナ:とにかく、覚えのある匂いの人が目の前に立っているんだな?
ユリア:こちらはここが北キャンバス大陸の南端とは知らないので、南にいったはずの人たちがなぜここにいるんだろうと思っておこう。しかも外見が男に戻っているので。
GM:メイリアもユリアだと気づかない、か。(考えて)このメンツだと……ユリアはトパーズとメイリアとは会ったことがあるはず。女の姿のときだけど。……あと、リトナが匂いでユリアと同一人物だと分かる、と。
リトナ:分かるだろうけど……何も言わない。
トパーズ:にゃあとでも言えば、あたしが分かるのに。
ユリア:(くんくんとビオの匂いを嗅いで)「……あんた、人間じゃないな」
一同:見れば分かるだろ(びしっ)。
ユリア:「間違えた。──あんた、『メーヴェ(魔族)』だろ」
ビオ:「おう? そういうお前は『オゥリン(人間)』だな」
ユリア:「いや、半々ぐらいだ」
ビオ:「ハーフかよ。微妙だな」
ユリア:「……微妙と言われてしまった」
トパーズ:「何の話をしてるんだろ……?」
ビオ:「つーかよ……(周りを見て)よく見りゃほとんどみんな『オゥリン』じゃねーか」
ドモ・ルール:気づいてなかったのか?
トパーズ:暗かったからね。
リトナ:気にしてなかっただけだろ。微妙なのが現れたから、初めて周りを気にするようになったんじゃ。
ユリア:「なんでこんなところに『メーヴェ』が?」
ビオ:「なんでっつーか……どこだよ、ここ」
ユリア:「ここはクリムソンの北にあるベール山の奥だ」
トパーズ:「……ここ、南でしょ?」
メイリア:「クローム砂漠の南端のはずです」
ユリア:「南……? ベール山はアーケインから近い、北の山です」
一同:「……んん?」
ユリア:「ちょっと待ってくださいよ。(地面に地図を描いて)ここがクリムソンで、ここがベール山です。南って、どういうことです?」
トパーズ:(地図に描き足して)「あたしたちはオーレオリン帝国を横断して、ジョンブリアン王国を縦断して、今この大陸の南端──南大陸との接点にいるんです。ベール山のはず、ないです」
ユリア:「……そういえば、ここがどこかなんて今まで気にしたことなかったな……。──ちょっと、ここの住人に聞いてみましょうか」
トパーズ:「そうしましょう」
ビオ:「そいつらに聞けば分かるのか? ならさっさといこうぜ。すっきりしねえのは嫌いだ」
トパーズ:「まあまあ、そんなあせることないよ。『慌てる乞食はもらいが少ない』って言うし」
ビオ:「俺は乞食じゃねえ」
トパーズ:「急いでも、たくさんもらえるとは限らないって例えです」
ビオ:「のんびりしてっと、食いもんなくなっちまうだろ?」
トパーズ:「『残りものには福がある』って言って──って、ことわざ教みたいになってきたな」
ユリア:「いきましょう」
<禁猟区>を抜け、一行はアルクの部族の集落にたどり着いた。
GM:『オゥリン』の集落だね。
ユリア:体格もすごくいいし、小さな角があったりするので、あまり人間ぽくないかも。
GM:『10食(スティールのこと)』みたいなのか。
話を聞いてみると、ここは北と南の大陸を結ぶ場所であることが分かった。
トパーズ:ほーらやっぱり。胸をはって、ちょっと威張ってよ。
リトナ:薄い胸を。
トパーズ:うるさいっ!
ユリア:「んー……。これはどういうことなのだろう。……ベール山の洞窟が、ここに通じているということか……?」
トパーズ:「ん?」
ユリア:「みなさんがアーケインを出発して随分経つじゃないですか。それから後にベール山へ向かった私が、ここにいる」
トパーズ:「んー……? 君、どこかで会ったこと、ある? アーケインのこと、知ってるみたいだし」
ユリア:「どうかな」
幽谷の民:「おまえさんら、ひょっとしてあの洞窟を通っただか?」
ユリア:「おそらくそうだ」
幽谷の民:「あっそこは<禁猟区>の中でもトックベツあぶねえ場所だあ。霊がよぅお、寄ってくんだ」
ユリア:「霊、か……」
幽谷の民:「んだ。<禁猟区>にはよぅお、入んねほーがいぃい。あとよぅお、<ガズィの鎖>にもなぁ」
一同:「……<鎖>?」
幽谷の民:「もんのすげふっとい鎖がよぅお、天まで伸びてんだ。<黒鳥居>の奥だけんど、なーんかチャリチャリ音はすっし、背筋ぃぞっくぞくすっし、近寄んねほーがいーい」
ドモ・ルール:お? 伏線か?
ビオ:天に向かってって……上の方はどうなってんだ?
GM:ない。
ビオ:は?
GM:太ーい鎖が天まで伸びてて、見上げると途中で空中に掻き消えてる。
ビオ:……ははーん、不思議鎖か。
リトナ:下は?
GM:地面につながってる。
リトナ:鎖……霊……。そうか、この鎖のひとつひとつが──
GM:ああ、そうさ、輪族の集まりさ(投げやり)。
リトナ:天に召されるのを待っている輪族の集団なんだな。
トパーズ:……ホントに輪族なの?
GM:嘘です。何の鎖なのかさっぱり。
リトナ:だから、輪族の公団マンションなんだよ。
トパーズ:なんで公団……?
夕暮れが近い。一行は、アルクの集落で一晩過ごすことにした。
ビオ:(夜食を食べながら、空を見上げ)「ここはよ、<真なるアルカディア>じゃねえのか?」
リトナ:(周りに人がいないことを確認して)「見れば分かるでしょ? 『オゥリン』の世界だよ、ここは。──ビオさん、どう思う? さっきの青い空とか」
ビオ:「不吉だ」
リトナ:「不吉か……。昔はね、アルカディアもこういう空だったらしいよ。こういう世界だったらしいよ。随分と、昔の話だけど」
ビオ:「いくつだよ、お前」
リトナ:「レディに年齢を聞くなんて失礼な」
ドモ・ルール:レディだったのか。……で、わしはビオさんに気づいてもらえるようキラキラ自己主張。
GM:ビオが気づいたところで何の解決にもならないと思うけど。
リトナ:「だからオレたちが探してる<真なるアルカディア>の空は、あんな、青い空なのかもしれない」
ドモ・ルール:きらんきらんきらんきらん。
ビオ:自分、目にうるさいねん!(ビシッ)
ドモ・ルール:なぜに関西弁……。


