OP.3[夜毎、神話がたどりつくところ]-a tale for you- 05


 森の中に足を踏み入れるのは久しぶりだった。自分の足で歩くのも。

 木漏れ日をその見えない目に感じながら、オルディネールはゆっくりと顔を巡らせた。

 傍らに、ミュスカディの気配。人の気配。そして、『守り神』たちの気配。
 

レイチェル:「これから何が始まるのだ?」

ファン・ルーン:「なんだ、まだ話してなかったのかイッチェル」

ワイズ:「その名では呼ぶなと言ったはずだ」

ファン・ルーン:「偽名とかは、あんまり使わない方がいいぞ?」

ワイズ:「心得ておこう。フローレンス=ファン=ストライクイーグル」

ファン・ルーン:「ああそうしてくれ、『緑の守り神』」
 

 どうやらふたりは知り合いであったらしい。
 

レイチェル:「どういうつながり?」

ファン・ルーン:「昔ちょっと」
 

 レイチェルがワイズについて知っていることは少ない。

 『沈黙の森』にある<システム>の一部だということ。『緑の守り神』と呼ばれることもあること。

 そして自分たち6人は<ウロボロス・システム>と呼ばれる装置の部品<パーツ>であること。

 <ウロボロス・システム>とは何なのか、詳しいデータをまだレイチェルは所有していない。

 システム再構築のときにデータがダウンロードされるはずだ。それで全て分かる。

 ワイズはそう言っていたが……

 今『魔王の森』の奥、『スノウ樹』があった地底湖を目指しているのはファン・ルーン、レイチェル、ワイズ〜ゴーチェル、フウゲツ、マリアルイサ、オルディネール、ミュスカディ、南キャンバス大陸の面々。そして、トパーズ。トパーズの手には銀色の大剣が握られている。名前は確か、『朔夜』……。

 地底湖の底に沈んでいた奇妙な円盤。あれが<ウロボロス・システム>なのだろうか……。
 

GM:では、地底湖に到着だ。『スノウ樹』の姿は既になく、水面からガレキがところどころ顔を出している。上を見上げればぽっかりと丸い穴。

レイチェル:Fの最終話の舞台になった場所だな。

GM:そして何より目を引くのは湖の真ん中にでーんと浮かんでる、エスペルプレーナ4だろう。

一同:ををー。

ここにいないヴァンダイク:これは、『船』に押しつぶされているのではないかね、湖底の装置は。

レイチェル:………………。

GM:F開始当初からここに船を浮かべるつもりだったから、そのへんは大丈夫なように設定していた……はず。

フウゲツ:──で、その何たらシステムって、湖の底にあったアレか?

レイチェル:おそらく。そろそろ教えてくれてもいいだろう、GM。

GM:うん。

レイチェル:ん?

GM:いや、おっしゃるとーり。アレが<ウロボロス・システム>のハードウェアだよ。で、そこにレイチェルたちが持つデータを入れることで、装置は復活する。

レイチェル:どういう装置なのだ。

GM:一言で言うと、混沌制御装置。

リューセ:……混沌?

GM:この<世界>を構成するふたつの力──『秩序』と『混沌』だね──のうち、『秩序』の流れを制御する装置。これがないと星は暴走した『混沌』に飲み込まれ、維持できなくなる。

フウゲツ:それって……今のアルカディアみたいに?

GM:まさにそうだね。

レイチェル:で、今その<ウロボロス・システム>は稼動していない。……大丈夫なのか、この星は。

GM:大丈夫だよ。この星の<ウロボロス・システム>はちゃんと動いてるから。

レイチェル:じゃあこの装置は──

ここにいないヴァンダイク:魔界のものなのではないか?

アルバス:となると……レイチェルは魔族!

GM:いや、そんな短絡的な。……でも、レイチェルがアルカディアの<ウロボロス・システム>というのは正しい。

レイチェル:………………。

GM:湖底に沈んだ<ウロボロス・システム>はエスペルプレーナの下部ハッチからなら回収できると思うよ。

ゼナ:じゃあボクが回収します。

レイチェル:手伝おう。

GM:引き上げられた装置は、別名<ウロボロスの円環>というだけあって真ん中に穴が開いた平べったいドーナツ状の物体なんだけど……ちょうど真ん中に、丸いカプセルがはまっている。土星みたいな形になってるね。で、ワイズの話だとカプセルに見覚えがないらしい。

フウゲツ:正体不明のガチャポンが!

GM:いや、ガチャポンというか……レイチェルとシュリはFの7話で中を見たはずだけど。

レイチェル:胎児が入っていた……。

GM:別の装置を取り付けることで、本来とは別の役割を果たすものにしてたんだね。例えば『結界』をはるとか。特殊な磁場を構成して幻覚を見せるとか。

ここにいないユリア:子作りをするとか。

GM:まあ、ね。……で、胎児だったはずのそれが、いつの間にか大きくなって立派な赤ん坊に育っているのが、透明なカプセル越しに見える。

一同:ほほーう?

フウゲツ:(ピンときて)髪の色は!?

GM:……茶色(ニヤリ)。

フウゲツ:(ふうぅぅーと大きく息を吐き)緑だったらどうしようかと思ったぜ。

GM:ヒドイ(笑)。

フウゲツ:「よし、俺があのカプセルを回収してきます」

ワイズ:「確かに、邪魔なパーツではあるが……」

ここにいないユリア:中の干からびた赤ん坊も含めて。

GM:死んでない死んでない(笑)。カプセルは、かぽっと外せそうだ。直径は1メートル弱ぐらい。

ここにいないユリア:でっかい赤ん坊れすね。

GM:ぎっちり詰まってるワケではないよ。

ここにいないユリア:え、ガチャポンといえば、バラバラで中に入ってるものでは?
 

 なんてことを言ってる間に、フウゲツとレイチェルがカプセルを回収した。
 

フウゲツ:「よし、カプセルは保護した。カプセルのことは任せてくれ!」

GM:俺は必ずこのカプセルを砕いてみせる!

フウゲツ:いや、そうではなくて。

アルバス:電子レンジに入れてチンだ!

ここにいないドモ・ルール:やめれ。

GM:レイチェルなら開け方も分かるだろう。

フウゲツ:赤ん坊をそっと抱きかかえるぞ。……GM、やっぱり、そうなんだろ?

GM:(うなずいて)面影があるよ。
 

 フウゲツはしっかりとその赤ん坊を抱いた。
 

フウゲツ:「……やっぱりそうなんだな、スノウ」



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