「おふたりは……まるで双子のようにそっくりですわね」
よく、そう言われた。
「よろしいですわねぇ、フェルチアイア様。立派なお姉様がいて」
乳母に。家臣に。他国の使者に。
「あなたも、いつかリースリング様のように……」
それはそうだろう……と私は思う。
「ああ、どうかお心を確かに……」
私と姉はうりふたつ。それはそうだろう。
「これからは、あなたがお姉様のお心を継いでくださいませ」
だって私のこの姿は……
GM(ゲームマスター):話は、キュアから始まる。
プレイヤーE(以下キュア):……私?
ヴァンダイク:いきなり9話から始まるのか。
GM:9話ではなくキュアね。今回から参加の、新キャラです。その代わり今回はドモ・ルールのプレイヤーがいない。
キュア・アルトエッセン:なかなか全員そろわないものだね。
GM:みんな忙しいからね。……で、キュアからです。
キュア:はいはい。
意識が朦朧としていた。底。意識の……底?
浮かび上がる。急速に、周囲が明るくなっていく。
そして――キュアは目覚めた。
GM:気がつくと、キュアはレプス04小隊の面々に囲まれている。眠っていた君の顔を、覗き込んでいるかんじかな。猫に、翼のあるおじさんに、トカゲ人。
ヴァンダイク公爵:「目を覚ましたようだな」
ビオ・サバール・ローレンラウシェン:「おら起きろ!」(蹴る)
キュア:……囲まれているメンバーに見覚えは?
GM:見覚えと言うか……君は、実は<帝国>の兵士ではなくて<連合国>の兵士なのだな。
キュア:そ……そうなの?
GM:そうなの。
キュア:ということは……いきなり敵地?
GM:そういうことになるけど……キャラクターにはここが<帝国>領であることも、彼らが<帝国>の傭兵であることも分からない。
ヴァンダイク:我々の服のどこかに、レプス隊の印があるかもしれんがね。
GM:キュアの服なんだけど……胸元が大きくはだけていたり裾がまくれていたり、何ともだらしない格好だ。んで、胸の上に猫が乗ってる。
キュア:(胸元を押さえて上半身を起こしてから)「アナタたちは……誰?」
顔に触れてみる。鼻、口、おでこの小さな角、視界の端に映る黒髪。間違いなく、自分の身体。
リトナ・A・I:(ころころと転げ落ちた後、のびをする)
ヴァンダイク:「どうした? 何をキョトンとしている?」
ビオ:「そんなマネされても笑えねーんだよ、早く起きろよ」
ヴァンダイク:「『失敗』したかと思うではないか。心配させるな」
ビオ:「『失敗』したら、それはそれでおもしろかったがな」
キュア:「??? ……一体何を言っている? お前たちは誰だ! 私をどうした!」
リトナ:「どうした、って言われてもな……」
ビオ:「どうしたって……(ニヤリと笑って)それは言えんな」(一同笑い)
ヴァンダイク:(話を変えて)「さて、そろそろ次の村でも見つけんと……」
ビオ:「腹減って死んじまうなぁ」
リトナ:「起きたみたいだし、とりあえず朝ごはんにしようか」
キュア:……完全に黙殺されている……。
ビオ:「めし、めし〜♪」
キュア:気を失う前の記憶って、ある?
GM:そういうときは判定だな。『心』で判定してみて。状況による修正は特にないから、あとはそっちの修正だけで。
キュア:(キャラクターシートを見て)『心』だと……[冷静(+5)]というのがあるな。
GM:では、サイコロを振るのだ。
キュア:(コロコロ)……92。失敗してる。
GM:(失敗か……ちょうどいいな)自分の名前とか<連合国>の兵士であることとかは思い出せるけど、なんでここにいるのかそのへんの記憶は曖昧なままだね。
ビオ:さ、握り飯でも作るか。
GM:……米があるの?
リトナ:いや、『何か』を握ってるんだよ。
ヴァンダイク:ゴ○ブリとか。
ビオ:それはイヤだぞ。もっとグルメなものを握らせてくれ。
ヴァンダイク:ではグルメなゴ○ブリを。
ビオ:……ゴ○ブリから離れようぜ。
ヴァンダイク:トカゲはゴ○ブリを食べるものだ。
ビオ:いや、それはそうだが……。
キュア:「……だから、ここは――」
ビオ:「そこ! 飯のときに顔洗うな!」
リトナ:「食事のときは洗わないよぉ」
キュア:「だから……」
ヴァンダイク:「村を出てもう5日か……。次の村にはまだ着かないのだろうか」
キュア:「……誰か話を聞いて……」
GM:このままじゃ話が進まないな。キュア、ちょっとサイコロ振ってくれる? 『心』の判定で、修正は特になし。
キュア:(コロコロ)今度は成功している。
GM:なら、左手の中指に見慣れない指輪がはまっているのに気づいた。
キュア:それはとりあえず外そうとしてみるけど……外れる?
GM:外れない。魔法的な力が働いてるみたいだよ。
キュア:「この指輪は何だ? お前たち私に何を――」
リトナ:「なに? ドモさん、もう飽きたの?」
ヴァンダイク:「だがこのあたりにはロクな死体が……」
リトナ:「死体である必要はないでしょ? でも、個人的には今のままの方がやわらかくて寝心地いいんだけど」
ヴァンダイク:「いやいや、そろそろ次あたりは美少年を……のっほっほぅ♪(怪しい笑い)」
キュア:「……何だ? 何の話をしているのだ……? ……そもそも私はドモなんて名前じゃないぞ!」
リトナ:「はいはい。――で、今日はどうする?」
ヴァンダイク:「西へ進むしかないだろう」
ビオ:天竺を目指して西へ、だな。
ヴァンダイク:GM、地図とかはないの?
GM:地図は、後で描いて説明するからそれまで待ってて。――君たちが進んでいるのは<黄昏へと続く道>と呼ばれる道だ。西に向かってずーっと続いているのだな。
ヴァンダイク:あの村を出発して5日歩いても、まだ何も見えないのか?
GM:西の方に森らしきものが見えるよ。と言っても、何だか色がおかしい。白っぽい森だね。
リトナ:ゴルフとかするの?
GM:それは森違い。
リトナ:あの人は全てが「技能なし値」だよね。
GM:それはさておき……キュア、もう一回判定してみて。
キュア:(コロコロ)……また失敗してる。
GM:んー、これじゃホントに話が進まないなー……。――プレイヤーとしては、今どういう状況か分かってる?
キュア(のプレイヤー):だから……ドモ・ルールに身体を乗っ取られたんでしょ?
ヴァンダイク:今はその呪縛が解けてしまっておるけどな。
キュア:一体いつの間に……。
ヴァンダイク:最初から。
キュア:へ?
GM:最初から君は登場してたんだよ。プロローグでビオさんがさらってきた<連合国>の回復役、あれがキュアだったの。
キュア:………………そーだったんだ……。
GM:プレイヤーが分かってるなら問題ないや。このまま話を進めよう。
キュア:ちょっと、私はワケも分からないまま得体の知れない連中についていってるの?
GM:だって食料はビオさんが持ってるし、ここがどこかもさっぱり見当つかないし。
キュア:あう……しぶしぶついていくしかない……。
GM:じゃ、話を進めるよ。