ACT3.0[かえるべきばしょ] 06

 一方そのころ、ヤオに案内されたレイチェルもまた、『魔王の森』に来ていた。
 

GM:ヤオが案内してくれたのは、何と『五分厘』のすみかだった洞窟だよ。

レイチェル:「ここか……」

エミリー:飼ってたのって、『五分厘』?

ユリア:ああ、いよいよ『五分厘』が人間以下の存在に……。

GM:外野は口をはさまない。──で、洞窟の中にはボッツとキリー、それからボロいマントを羽織った3人の男だ。ひとりはガタイがよくて眼光の鋭い、傭兵風の男。腰には剣を下げている。もうひとりはメガネをかけてひょろっとした、ヲタク系の男。最後のひとりが、髪もヒゲも伸びた、ぼーっとした男。

レイチェル:その3人に見覚えは?

GM:ないよ。街の住人でも『五分厘』でもない。

レイチェル:「………………」

傭兵風の男:(腰の剣に手をのばす)

ヤオ:(レイチェルに)「ヤオたちのお友達だよ」

ボッツ:「ヤオ、ダメじゃん! 秘密なのに!」

ヤオ:「だって……」

レイチェル:「アナタたちは誰……?」

傭兵風の男:「………………。……俺はオーキッド

レイチェル:「オーキッド……?」

オーキッド:「メガネの方がタン、もうひとりがブルーだ」

レイチェル:「私は、レイチェル」

オーキッド:「レイチェルさん、ね……」

レイチェル:「街の人たちは子供たちがいなくなったことに慌て、泥棒があったことに恐れおののいている」

ユリア:ちょっとおおげさだね(笑)。

オーキッド:「知ったことか。コイツらが勝手についてきたんだ」

レイチェル:「信じられない。そういうことを言うの……」

オーキッド:「事実だ」(剣を抜く)

レイチェル:「動くな。もし子供たちに手出ししたら……」(ビームトンファーをすぐ抜ける状態にする)

タン:「あわ……あわわわわ……」

ブルー:「………………」

オーキッド:「………………」

レイチェル:「………………」

GM:ジリジリと、緊張感が高まっていく……。そして──

エミリー:(突然)まあ、3人ともこんなところにいたの。まあまあ、うちの子供たちが迷惑かけてすみません。さ、お家帰りましょうねぇ〜。

GM:状況を考えろ、お前は。そういうことして大丈夫そうに見えるか?

エミリー:こちらとしてみれば子供さえ確保できれば後はどうでもいいんですが。

GM:それが無理だと言ってるの。

ユリア:えーと……洞窟に着いちゃっていいの?

GM:ぬう、着いたことになってしまったようだよ。で、ひとり説得失敗。

シュリ:確保ォー!

GM:無理。

シュリ:あなたがたを住居不法侵入、ならびに窃盗および営利目的の誘拐の疑いで、確保させていただきます。御同行願います。──じゃ、ダメ?

GM:ダメ。

ユリア:ブルーって人がちょっとカッコイイから、ぽぉーっと見てます(←惚れっぽい)。

GM:ええい役に立たないヤツらだ。──どうやら、レイチェルにかかってるみたいだよ。

レイチェル:む……。子供たちの様子は?

GM:君とオーキッドの間に、両手を広げて割って入ってくる。

キリー:「戦ってはダメです」

ボッツ:「ケンカしないで!」

レイチェル:「お願いだからそこをどいて。おじちゃんたちと話をさせて」

ヤオ:「いたいことしない?」

レイチェル:「しない。約束する」

オーキッド:「………………」

レイチェル:「子供たちはアナタを慕っている。アナタたちを傷つけたくはない。……どうか、剣を納めてほしい」
 

 そう言って、レイチェルはビームトンファーを納めた。
 

オーキッド:「分かった。……戦う気も、失せちまったしな……」
 

 オーキッドもまた、剣を納めた。
 

レイチェル:「アナタたちは、自分が何をやったか分かっているのですか?」

オーキッド:「食料をいただいただけだ」

レイチェル:「それは窃盗です」

オーキッド:「分かってる。それに関しては悪かったと思ってるさ」

レイチェル:「だったら……」

オーキッド:「だが……今更どのツラ下げて戻ってこれるってんだ……」

レイチェル:「戻る?」

オーキッド:「俺は…………昔、この街の孤児だったんだ……」
 

 15年前、『世界のために戦う剣士になる』と誓って街を出たが、喧嘩早い性格が災いし……夢破れ、戻ってきたのだ。
 

ユリア:格好悪くて、今更顔を出せなかったってこと?

GM:そ。んで、空腹のあまり昔自分が住んでた教会に忍び込んだ。

シュリ:その方がよっぽど恥ずかしい気がするけど?

GM:まあ、そう言わないでよ(笑)。

エミリー:子供たちがいなくなったのは?

GM:不法侵入者に気づいて、勇敢にも後をつけて……なぜか仲良くなってしまったのだ。

エミリー:あ、そういうこと。

シュリ:あとの二人は?

GM:タンはヲタちっくな性格で世間に馴染めず、ブルーは口数が少ないというか自閉症気味なので同じくひとりで生きていくのは難しい。んで、世間に馴染めなかった3人がつるんだのだな。

ユリア:不精髭3人衆だね。

エミリー:「3人の処分、どうします?」

シュリ:「金がないなら体で払ってもらうしかないわね。──ドブさらいに猫探し、いろいろあるけどどれがいい?」

ユリア:「それ、自警団の仕事……」

シュリ:「とりあえず盗んだ分だけでも働いてもらわないとね。その後は、彼らがこの街にいたいならいればいいし」

オーキッド:「俺は、剣しか能のない男だ」

シュリ:「じゃ、自警団ね」

サデル:「図体ばかりでかくなりよって、このクソガキが……」

オーキッド:「じいさん、すまねえ……」

エミリー:サデルさんは知ってたの?

GM:おう。オーキッドの話を聞いて、思い出したらしい。

エミリー:「何にしても、一回教会へ行きましょう」

オーキッド:「シルヴァばあさんに会うのか……。こえーなァ……」

ユリア:「そのあとは、お風呂ですね!」

 共同浴場『クヴェレ』──

イーテ「へいらっしゃい、お一人様──って、自警団の連中か。今日はいつもより早いじゃねーか」

シュリ:「ちょっとね、くさい3人をお風呂に入らせようかと思って」

イーテ:(男湯の方に入ってきたオーキッドたちを見て)「うは、こりゃ確かに……」

シルヴァ:「その子らの分は、私が払うよ」

イーテ:「ばーさんの知り合いかい?」

シルヴァ:「かわいいバカ息子たちさ。──さ、行った行った」

シュリ:「はーい!」

イーテ:「ごゆっくり〜!」
 

 かぽーん!(お風呂を表す効果音)
 

ボッツ:(こそこそ)「シュリねーちゃん、やっぱおっぱいデカイよな」

キリー:(こそこそ)「データによると、Fカップらしいですから。……メガネがくもって見えない」

シルヴァ:「ちゃんと頭も洗うんだよ」

ヤオ:「イヤ! シャンプー目にしみるもん」

シルヴァ:「やれやれ。――レイチェル、手伝ってやってくれるかい?」

レイチェル:「はい。――ヤオちゃん、ここに座って」

ヤオ:「はーい!」

シュリ:(湯船につかりながら)「あー、今日もよく働いたぁ〜!」

ユリア:「そうですか? 最近、ロボさんしか働いてない気が……」

レイチェル:「………………」(照れながら、ヤオの頭を洗っている)

エミリー:「でもまあ、無事事件も解決しましたし……」

シュリ:「雑用や仕事も、しばらくは彼らがやってくれそうだしね」

シルヴァ:「こき使ってやっとくれ」

レイチェル:(今日はよくしゃべったから疲れた……。鎧の汚れも落としておかないと……)

シュリ:「ドブさらいはオーキッドがやるでしょ? 猫探しは……」

レイチェル:(ネコ……私が探したい……)

シュリ:「スリーアイかオーキッドたちでいいか」

レイチェル:(あう……ネコぉ……)

 そして……忘れ去られている村長。
 

村長:「……ひょ?」

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僕に訪れた、ふたつの出逢い。
ひとつは現実。
この街に変化をもたらす、月の民の男。
ひとつは幻。
空が金色に輝く収穫祭で。
花降る夜に君はいた。
たたずむ僕に――君は微笑んだ。



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