ACT5.0[きみはほほえんだ] 10


 一番奥の建物に通されるヴァイスとユリア。

 植物で彩られた部屋の中をきょろきょろ見回していると、ややあって、細みで長身の青年が姿を現した。
 

古の民の長「お待たせした。──今日は、いかような御用で?」

ヴァイス:「はい、実は……古の民のみなさんにも祭りに参加していただきたくて、お願いに参りました」

古の民の長:「『古』の民、か……。──見たところ、『月影の民』の者のようですね。アナタがたが『月影』を名乗るなら、我々は『月蛇の民』と名乗りましょう」

ヴァイス:「し、失礼しました……」

古の民の長:「まあよいでしょう。我々も『メーヴェ』を『魔族』と呼ぶときもある。……収穫祭の話でしたね」

ヴァイス:「はい」

古の民の長:「実り多きことへの感謝と祈り、我々は決して嫌っているわけではありません。むしろ、自然への感謝の気持ちはアナタがたより強い。──だが……『月蛇の民』は、騒ぐことをよしとはしません。火を焚いて夜の闇を裂き、歌い踊ることで森の静寂を乱すことを……好まないのです」

ヴァイス:「はあ、なるほど……。……では、初日の祈りを捧げる行事にだけでも参加してもらえませんか?」

古の民の長:「アナタは何もご存じないようだ」

ヴァイス:「はい?」

古の民の長:「アナタが言ったその祈祷は、私が行かないことには始まらないというのに」

一同:(大笑い)

ヴァイス:そーなの!?

GM:そーなの(笑)。

ヴァイス:だったら最初に言ってよぉ〜!

シュリ:ヴァイスってホント、街のことに興味がないのねー。構造も、住んでる人も、行事も知らなかったじゃない。

GM:アーケインに帰ってきてからまだ1年足らずだしね。すっかり忘れてしまっているんだろう。

古の民の長:「特に今年は、我々と親睦のあるヴァルト=ラィヒ族の来賓もあるようですし」

ヴァイス:あー……、なるほどね。

GM:だから、長とか、偉い人たちは参加するのだよ。それ以外の人たちは……いろいろかな。アーケインの住民と一緒に住むようになって、確かに物資のやりとりが増えて豊かにはなった。外の文化に興味を持つ者もいる。でも……魔族の血を引く者たちと酒が飲めるか、というのがあるのもまた事実。

ヴァイス:やっぱ、そういうのもあるの?

GM:そうだね。ヴァルト=ラィヒ族も魔族を嫌っているし、森に住むものたちと魔族の間には溝があるみたいだ。

ヴァイス:あっちを立てればこっちが立たず、か。

GM:平和そうに見えて、実は問題が多い街なんだよ、アーケインは。

古の民の長:「私からも、参加を呼びかけておきましょう」

ヴァイス:「はい、お願いします」

GM:街まで帰ってくると、もう夜の9時だね。

ユリア:あ、お店にいかないと(←酒場のウェイトレス兼バウンサー)

レイチェル:私も噴水に戻らないと。

ヴァイス:そうか……。僕はどうしようかな。

フウゲツ:報告にいけよ。

ヴァイス:じゃあ、ゲインさんのところへいく。
 

 (副)領主ゲインの家──

ヴァイス:「夜分遅く失礼しますー」

GM:一家団欒中だよ。ゲイン・セツ・スノウに、フウゲツと、なぜかシュリまで。

フウゲツ:ついさっきまで劇の稽古をしていたんですよ。復習するように言ってから、一旦帰ってきました。

ヴァイス:(こほん、と咳払いして)「まず古の民の方々ですが、長も参加を呼びかけてくれるそうで、初日は今までより参加者が増えるんじゃないかと思われます。魔族ハーフの方々は、やはり外見が大きく異なる人たちが人目を気にして参加をしぶっているようです。だから、どうにかして、外見を気にしなくてもいいんだということを教えてあげられればいいんですが」

ゲイン:「………………」

シュリ:「相変わらず手際悪いわねー。こんな時間までかかってそれだけ? それに、その報告は去年も一昨年も聞いたわよ」

ヴァイス:てゆーかなー……道に迷ったのが大きかったよなー……。

シュリ:人生の道にね。──で?

ヴァイス:考えがないこともないんだけど。

シュリ:ゲインさんはどう思ってるの?

GM:みんなが仲良くできればいいなあ、とは思っているだろうけど。

フウゲツ:だからこそ、この状態なんじゃないんですか? 露骨に嫌ってるもの同士が顔を合わせるよりはいいだろうとの配慮なんじゃないかと、俺は思いましたけど。

シュリ:出たいけど出れない人がいるんなら、出られるような環境を作ってあげるのは悪くはないでしょうね。

GM:フウゲツの意見は主に古の民に、シュリの意見は主に魔族ハーフに当てはまるのかな。──で、ヴァイス君、さっき言ってたグッドアイデアとは? あと3時間でできる、ナイスでグッドなアイデアなら、ぜひ聞かせてほしいんだけど。

ヴァイス:ナイスでグッドなんて言ってないぞ。

フウゲツ:(そうか……あまり時間がないな)「それじゃ俺は、劇の練習に戻らないといけないので」

ヴァイス:「夜の9時ですよ? これからまだやるんですか!?」

フウゲツ:「真剣さが大事です」

ゲイン:「あまりやりすぎないようにね」

セツ:「それなら、夜食代わりにこのお菓子持っていってくださいな」

スノウ:「ちょっと焦げたヤツだけど、おいしいですよ」

フウゲツ:「ありがとう、スノウ、セツさん」

シュリ:これからは、寝ても覚めても劇のことを考えるように!

フウゲツ:いつか、オペリオビッチ=ハイドレンジャーを招くことが夢ですから(笑)。

シュリ:……で、ヴァイスのアイデアって?

ヴァイス:………………。

GM:なんで黙るの。さっきアイデアがあるって言ったじゃん。

ヴァイス:……いいもん。

GM:何が「いいもん」なんだ(笑)。

ヴァイス:だって、3時間じゃ到底できないし……真っ向から否定されそうだもん。

シュリ:言うだけ言ってみたら?

ヴァイス:………………。

シュリ:なんで考えてたこと言うだけにそんなに時間がかかるの?

ヴァイス:考えれば考えるほど悪い方にしかいかないんだ、今。

シュリ:こっちには何の策もないんだし、たたき台にするためにも、言ってよ。

ヴァイス:……魔族ハーフの人たちがさ、私見に関係なく受け入れられる環境があればいいんだよな。それだったら……子供たちと交流を持たせるのはどうかな、と。

シュリ:愚案ね。子供は正直で残酷よ。

ユリア:いきなり「気持ちわりー」とか言ったらタイヘンれす。

ヴァイス:それを後から考えたんだよぉ〜。でも、偏見というのが育ってなければ……というのもあるし。

シュリ:微妙なとこね。それに、こんな時間だし。

ヴァイス:GMがホントに時間経過させちゃうからなー。

レイチェル:(リプレイでは書いてないけど)GMは、今回から厳しくいくと言った。

シュリ:街の人たちは、魔族ハーフを見てどんな印象なの? 日本人が外人見たときぐらい?

GM:それよりはもっとヒドイかな。見た目にインパクトがあるからね。でも、魔族ハーフが街にきた当初よりは随分マシになっているだろう。

ユリア:魔族ハーフの方がネガティブ思考なんだね。

GM:一度迫害された経験があるからね。

シュリ:じゃあ、「お祭り楽しそ〜」「参加したーい」って思えるような雰囲気を作るってのはアリ?

ヴァイス:『天の岩戸』作戦?

シュリ:近いものはあるかも。

ユリア:じゃあシュリが裸になって踊らないと(笑)。

ヴァイス:こちらからお酒とか料理とか持っていく、ってこと?

シュリ:それもあるし、祭りのときに軒先に飾るヤツ──麻袋と麦をリボンで結んだようなの──を一件一件配って回るとか。

ユリア:ハロウィンみたいに、魔族に扮装するのはダメれすか?

レイチェル:それはヤバイ。

ユリア:じゃあ、第二部のときみたいに『黒い粉』を使って総魔族化。

GM:やめい(笑)。

シュリ:話を戻して──そういう飾りと小瓶のお酒でも配ろう。音楽とかも、向こうに気を使って音量絞るんじゃなくて、かすかに聞こえるようにして、楽しそうな雰囲気を伝えるようにすればいいんじゃないかな。

ヴァイス:興味がわいて、ちょっと顔を出したら聞こえてくるぐらいで?

シュリ:そう。そして出てきたところを一網打尽。

ヴァイス:うわ。

シュリ:それは冗談だけど……リーダー、そんなかんじでどう?

ヴァイス:それでいいと思う。

フウゲツ:古の民たちには、差し入れだけ持っていって、あとは各人で楽しんでもらえばいいんじゃないですか? 彼らには彼らなりの楽しみ方があるだろうから。

ヴァイス:まとめると──古の民には、料理とお酒の差し入れをして、あとは各自、静かに楽しんでもらう。魔族ハーフたちには、軒先に飾る飾りとお酒とかを一件一件配ってまわる。あと、祭りを和みやすい雰囲気にして、参加しやすいようにする、と。

シュリ:それと、祭りに行きたい気分にさせるように、楽しい雰囲気が魔族ハーフエリアにまで伝わるようにするのもね。

ヴァイス:じゃあ、酒場にいってお酒の小瓶を準備してくれるよう頼んできます。

GM:何とか話がまとまったみたいだね。じゃあ、これで長かった18日は終わりだ。



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